研究課題
カニクイザルはヒトと同じ眼球構造を持つ貴重な実験動物である。このサル種に対し、CRISPR/Cas9システムを利用して遺伝性網膜疾患個体を作成し、その病態を明らかにすることを目的とした。従来の受精卵の作出に加え、GnRHアンタゴニストを投与する新たな卵胞発育刺激誘起法を用いて採取した卵は、顕微授精によって受精卵を作成できること、さらにCRISPR/Cas9プラスミドを前核に注入しても正常に卵割し、発生が進行することを確認した。また、受精卵培養には従来牛血清添加CMRL-1066培地を使用していたが、牛血清のロット差による培養成績への影響が危惧される。均一な成績を得ることを目的に成分が明らかな完全合成培地を用いたところ、胚盤胞への発生を確認することができた。卵の採取および受精卵の培養のような基盤的技術の改善が確認できた。そして、CRISPR/Cas9プラスミド注入受精卵を仮親に胚移植したところ、妊娠が得られたものの流産した。受胎産物を回収することができなかったために、遺伝子変異を確認することはできなかった。流産の要因は、受精卵の質、胚移植後の母体の状況、その他多くの要因が考えられる。CRISPR/Cas9プラスミドによる受精卵への負の影響も考えられることから、全く新たに構築したRNAタイプのCRISPR/Cas9を用意した。受精卵への応用を行う前に、カニクイザル体細胞を用いた検討を行っている。
すべて 2015
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