1.先天性横隔膜ヘルニアの予後因子である肺低形成と遷延性肺高血圧に対する治療として、臍帯由来間葉系幹細胞(UC-WJSCs)を用いた再生医療の可能性を検討するための基礎研究を行った。間葉系幹細胞の一つである脂肪幹細胞が、組織再生因子を産生することで肺組織再生を促すことは既に知られており、本研究ではUC-WJSCsを利用することを選択した。 2.観察に適したラット胎児肺を用いて、UC-WJSCsとの共培養による胎児肺の分化誘導を確認した。UC-WJSCsの有用性をLung bud増加率と肺成長に関与するmRNAの発現により、UC-WJSCsとの共培養群が幹細胞なしのコントロール群とで比較検討した。結果はUC-WJSCsとの共培養群が幹細胞なし群に比し、Lung budの増加率が有意に高値であった。また、肺血管新生とlung branching morphogenesisに関与する因子であるVEGF、BMP-4、TTF-1の発現がUC-WJSCsとの共培養群に有意に高値であった。しかし、Shhの発現には両群間に有意差は認めなかった。 3.ボランティアの妊婦から出産時の臍帯の提供を受け、臍帯のワルトンジェリーからUC-WJSCsを取り出す実験を行なった。2-3mm大に細切したワルトンジェリーから、UC-WJSCsを抽出するのには2-4週間必要であった。このUC-WJSCsを用いて、コラーゲン足場にシート状に培養を行なった。幹細胞シートをマウス肺に移植する実験は、マウスの全身麻酔と開胸手術の維持がこんなんであった。 4.臍帯からUC-WJSCsを取り出し、継代培養を行う手技は確立された。また、UC-WJSCsが胎児肺組織に成長発育を促す影響を与えている可能性が示唆された。より臨床に即した基礎実験としては、シート状に培養したUC-WJSCsの肺への移植実験となるが、小動物に対する開胸手術などの技術的問題の克服が必要である。
|