研究課題/領域番号 |
15K15645
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田口 智章 九州大学, 医学研究院, 教授 (20197247)
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研究分担者 |
黒田 達夫 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (60170130)
山座 孝義 九州大学, 歯学研究院, 准教授 (80304814)
柳 佑典 福岡大学, 医学部, 助教 (30596664)
松浦 俊治 九州大学, 医学研究院, 講師 (10532856)
吉丸 耕一朗 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (60711190)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 小児消化器疾患学 / 消化管神経節細胞 / 再生医療 / 指定難病 / ヒルシュスプルング病 / ヒルシュスプルング病類縁疾患 / 組織工学 |
研究実績の概要 |
[具体的内容] 平成28年度の研究実績として、C57Bl/6マウスおよびヒルシュスプルング病モデルマウスの歯より歯髄を単離し培養することでマウス歯髄幹細胞(mesenchymal stem cell, MSC)の表現型及び機能評価を行う土壌を構築しつつある。腸管作成の上、移植を施す本研究課題に先行する形で、ヒト乳歯歯髄幹細胞(stem cells from human exfoliated deciduous teeth, SHED) を用いて、in vivoにおける分化傾向を探った。結果、SHEDは神経節細胞や神経線維へ分化した可能性が示唆されたが、その他への分化に関しては鋭意解析中である。これは、SHEDが神経堤由来であることも関与していると考えられる。また、ヒルシュスプルング病類縁疾患(H類縁)モデル動物において、幹細胞移植群では、コントロール群に比較して電気生理学的腸管収縮力や栄養吸収能の有意な改善、病理組織学的所見の改善を認めた。この知見はSHEDが様々な細胞にin vivoで分化していることを示唆している。 [意義・重要性]本研究成果は、最終的に小腸移植にならざるをえないヒルシュスプルング病(H病)の中でも罹患腸管が広範囲に及ぶ小腸型H病やH類縁に対する新規治療法の確立における大きな成果と判断できる。これら疾患は難治性希少性疾患であり、患児は現在、姑息的な繰り返す手術や静脈栄養に依存している。一方で小腸移植は拒絶反応を始めとする術後の重篤な合併症から本邦での実施はいまだ容易とはいえない。自家体性幹細胞由来の腸管の作成に向けた未分化細胞移植研究の本成果はin vitroでの腸管作成における有意義な成果と言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【理由】平成28年度の研究計画として掲げた内容は、C57BL/6マウスの小腸粘膜由来の幹細胞の単離培養を行い、その培養細胞の性質を採取部位別(近位小腸もしくは遠位小腸)に評価すること、ならびにin vitroにて小腸粘膜スフェロイドさらにはオルガノイドを作成することであった。前年、C57BL/6の歯髄からの幹細胞(歯髄MSC)の単離・培養に着手していることを述べたが、機能的成熟細胞への分化に関しては、いまだなしえていない。以下に示す研究推進方策にて実験を継続するとともに他手法についても模索してゆく。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度はこのC57BL/6由来歯髄及び骨髄MSCの機能的成熟細胞への分化系構築及びC57BL/6の胎仔の腸管粘膜由来上皮幹細胞由来の粘膜上皮細胞をin vitroで単離/培養を行うこと、さらには小腸粘膜のスフェロイド作成を目標とする。腸管形成のための方法としては、懸垂培養法・3Dプリンターを用いた臓器構築、ならびに、単純な培養法でもスフェロイドを形成しうることが知られてきた。種々の方法を施行錯誤してゆく。作成した腸管をC57BL/6背部皮下に移植し、生着の確認をするとともに電気生理学的解析を行い腸管の蠕動能を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は実験立案およびその初動にて難渋をした。このため、当初の計画通りの実験を行うことができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、実験計画に則り、次年度使用額を有効活用してゆく。
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