研究実績の概要 |
ヒトの敗血症性ショックは、種々のヒト免疫細胞のクロストークの結果として病態を形成することから、ヒト化マウスはヒトの敗血症性ショックの病態評価、治療評価のための革新的なモデルとして利用できうる。本研究では、マウスの生体内でヒト敗血症性ショックの免疫応答を観察できる系を確立し、抗ヒトCD300a抗体の敗血症性ショックに対する治療効果を検討した。具体的には、まず、複合型重症免疫不全マウスに、ヒト臍帯血を用いて造血幹細胞を移入しヒトの造血系を再構築したマウスを作製した。作製したヒト化マウスに、虫垂穿孔結索法(CLP)により敗血症を誘導した。それぞれの敗血症モデルマウスについて、生存期間のほか、血清中のALT、ASTなどの肝逸脱酵素やIFNg, TNF-a, IL-6, IL-8などを初めとしたサイトカイン、ケモカインの測定(ELISAまたは免疫ビーズ染色法で定量)動態などを解析した。その結果、ヒト化マウスにおいて、敗血症を誘導することが可能であった。炎症性サイトカイン、ケモカインの増加も認めた。抗ヒトCD300a抗体の敗血症性ショックに対する治療効果を検討するために、抗ヒトCD300a抗体を産生するハイブリドーマをマウス腹腔内に摂取し、腹水を作製し、多量の精製抗体を得た。虫垂穿孔結索法(CLP)を行ったマウスに、適切な抗体投与のタイミング、投与量、投与回数の検討を行った。CD300a抗体は、虫垂穿孔結索法(CLP)により敗血症によるマウスの生存期間を延長させる傾向を認めた。今後、詳細な解析が必要である。
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