研究課題/領域番号 |
15K15664
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小倉 裕司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70301265)
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研究分担者 |
吉矢 和久 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (40379201)
嶋津 岳士 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50196474)
清水 健太郎 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (60379203)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 侵襲 / 若返り因子 / 再生 / 幹細胞 / GDF11 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、全身性炎症反応に対する新たな制御法として、新規若返り因子GDF11(growth differentiation factor 11)投与の有効性を評価することである。全身性炎症反応に対するGDF11投与の効果を明らかにするために、まず敗血症患者における血中GDF11値の推移と予後、他の炎症マーカーとの関連性を検討した。 敗血症患者の血清検体を用いて次の項目を評価した。血中GDF11値をELISA法 (Cusabio Biotech, USA)で測定した。DAMPsとして、HMGB-1とヒストンH3値をELISA法(Shino-test, Kanagawa, Japan)にて評価した。炎症性サイトカインとしてIFN-α、IFN-γ、IL-1β、IL-6、IL-8、IL-12/IL-23p40、IL-17A、MCP-1、TNF-α値を、抗炎症性サイトカインとしてIL-4、IL-10値をフローサイトメトリー法にて評価した。重症度はAPACHE IIスコア(敗血症診断日)、SOFAスコア(採血日)で評価した。予後は28日生存期間にて評価した。 研究対象は敗血症患者15名、年齢中央値は71歳であった。そのうち生存10名、死亡5名で、APACHEII、SOFAスコアの中央値 は各21点と9点であった。敗血症患者のGDF11値(中央値34.23pg/mL)は健常人(中央値94.84ng/mL)と比較して有意差を認めなかった。予後を目的変数としたCox 比例ハザード回帰分析、ロジスティック回帰分析(AUC値=0.51)では、敗血症診断日の血中GDF11値はいずれも有意な説明因子とはならなかった。1、2日目における血中GDF11値は、HMGB-1値と有意な相関を認めた。血中GDF11値は、HMGB-1値以外のDMAPsやサイトカインと、各日とも相関は認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、全身性炎症反応に対する新たな制御法として、新規若返り因子GDF11(growth differentiation factor 11)投与の有効性を評価することである。全身性炎症反応に対するGDF11投与の効果を明らかにするために、研究の焦点を以下の3点に絞り実施する予定である。1)全身性炎症反応(敗血症、熱傷、熱中症)各モデルにおいて、発症急性期にGDF11の投与を行い、各週齢別に臓器障害・生存率の改善が得られるか評価する。2) GDF11投与群、非投与群において各幹細胞機能、各臓器の細胞障害・細胞死を免疫染色等により群間で評価し、週齢別に治療効果のメカニズムを明らかにする。 3)GDF11投与の有無により、全身性炎症反応に伴う各臓器における炎症、再生応答遺伝子、細胞死の制御遺伝子発現に差が生じるか、マイクロアレー法を用いて解析する。 本年は、まず敗血症患者における血中GDF11値の推移と予後、他の炎症マーカーとの関連性を検討し、GDF11の臨床患者における動向を明らかにした。今後、これらの知見を基に、各全身性炎症反応モデルにおいて発症急性期にGDF11の投与を行い、その有効性を検討する。したがって、研究ペースとしておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の焦点を以下の3点に絞り実施する。1)全身性炎症反応(敗血症、熱傷、熱中症)各モデルにおいて、発症急性期にGDF11の投与を行い、各週齢別に臓器障害・生存率の改善が得られるか評価する。2) GDF11投与群、非投与群において各幹細胞機能、各臓器の細胞障害・細胞死を免疫染色等により群間で評価し、週齢別に治療効果のメカニズムを明らかにする。 3)GDF11投与の有無により、全身性炎症反応に伴う各臓器における炎症、再生応答遺伝子、細胞死の制御遺伝子発現に差が生じるか、マイクロアレー法を用いて解析する。 具体的には、既に確立したマウスの全身性炎症反応(敗血症、熱傷、熱中症)各モデルにおいて、発症急性期にGDF11の投与を行い、各年齢別に臓器障害・生存率の改善が得られるかを評価する。また、GDF11投与各群において、各幹細胞(造血幹細胞、筋幹細胞、腸管上皮幹細胞)、血管内皮に分化する血管内皮前駆細胞、各臓器の細胞障害および細胞死(アポトーシス、オートファジー)を評価し、治療効果のメカニズムを明らかにする。さらに、敗血症、熱傷、熱中症各モデルを用いて、各年齢別に各臓器で発現の増強または低下する遺伝子をマイクロアレー法で同定、解析する。
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