研究実績の概要 |
近年,侵襲時に「危険信号」を知らせるアラミン(Alamin)は炎症を増幅させ,臓器障害や予後を悪化させる内因性物質で,High Mobility Group Box-1(HMGB1)やヒストン蛋白が挙げられる。私達は,核小体に豊富に存在するヌクレオフォスミン(Nucleophosmin, NPM),に着目し,敗血症ラットではNPMが血液中のみならず,体液中にも発現することを報告した(J Leukoc Biol 86: 645-653, 2009)。 本研究の目的は,ラットの敗血症モデルにおいて, 血液中のNPMやHMGB1, ヒストン蛋白が経時的にどのような経過をとるのか,また敗血症症例の保存凍結検体において,血中NPMやHMGB1, ヒストン蛋白濃度と患者のどのパラメータと関連が強いのかを検討した。 <実験1>対象と方法:盲腸結紮針穿刺によるラットの敗血症モデルを用い,血中のNPMやHMGB1, ヒストン蛋白濃度を24時間測定,観察した。結果:血液中のHMGB1は4時間後から,ヒストンは8時間後から増加し,16時間をピークに漸減した。HMGB1とヒストンは高い相関がみられ(R2=0.8),NPMとヒストンとの間にも弱い相関がみられた(r2=0.4)。 <実験2>対象と方法:敗血症患者の保存血漿を用いて,NPM, HMGB1, ヒストン蛋白濃度を測定し,バイタルサイン,SOFAなどの重症度,PCT, CRPなどの検査との相関を検討した。結果:NPMは敗血症性ショックでは有意な増加し,SOFA scoreとも有意な相関が得られた。 結語:新定義Sepsis-3では「敗血症は臓器障害を伴う感染症」と定義される。PNMは他のアラミンに比べ,臓器障害とよく相関することから,敗血症の診断,治療における重要なパラメータとなりえる。
|