研究課題/領域番号 |
15K15674
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
井上 佳世子 (野澤佳世子) 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任准教授 (90303130)
|
研究分担者 |
前田 健康 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40183941)
大峡 淳 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40266169)
河野 芳朗 朝日大学, 歯学部, 講師 (60303129) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 細胞・組織 / 歯学 / 口腔解剖 / 顎関節 |
研究実績の概要 |
1.顎関節原基誘導部位とその発現分子の同定 凝集細胞の判別法の確立:顎関節を構成する下顎頭および下顎窩への分化が予定される細胞が,その発生初期に細胞凝集となって誘導される部位には,iPS細胞を顎関節形成細胞へと分化させる遺伝子群が存在すると考えられる.この細胞凝集を誘導する分子の解析には,細胞凝集が出現する前後のマウス胎仔を組織切片観察に頼らずに,選別する必要がある.そこで,マウス胎仔の体重に着目し,顎関節形成段階との関連性を確認した.その結果,マウスの系統間では体重に差があるものの,同一系統ではマウス胎仔の体重によって凝集細胞出現直前のマウス胎仔を抽出することが可能となった.細胞凝集直前から細胞凝集までの非常に短いステージを検索するために,細胞凝集直前の顎関節予定領域の発生を,母体外で継続させる必要がある.そこで顎関節の母体外発生誘導法として,Trowell法による器官培養,回転ドラム方式による全胚培養,回転ドラム方式と頭部部分器官培養の併用法を検索した結果,回転ドラム方式と頭部部分器官培養の併用法により顎関節の発生が継続することが見出された.また,その培養後にkidney transplantation法をさらに併用させて,細胞凝集組織を石灰化まで誘導させることにも成功した.次に,凝集細胞誘導部位を同定するには,細胞凝集組織の形態を3次元的に把握する必要がある.2Dスライス画像の組み合わせと,領域区分け抽出法をベースにした3次元構築ソフトにより,細胞凝集組織の3次元構築に成功した.同様の方法により,凝集組織,外側翼突筋,メッケル軟骨間の詳細な3次元的位置関係の把握も行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
回転ドラム方式と頭部部分器官培養の併用法で,凝集細胞出現直前の組織の顎関節への誘導が可能になったものの,培養液浸透を促すための頭部の一部除去が,培養後の組織の方向性の決定を困難にし,その後の解析の精度を低下させることが明らかとなった.しかしながら事前の組織染色等で方向性の精度が向上することを見出したため,現在サンプル数を増やし確認中であり,解決する見込みである.顎関節領域のkidney transplantation法による石灰化の誘導にも成功したが,サンプルの大きさによってドナーへの負担が変化し,石灰化にばらつきが認められた.重さによって移植サンプルのサイズを一定化させることで,ばらつきを減少させることが可能と考えられ,現在サンプル数を増やして確認中である.
|
今後の研究の推進方策 |
1.(1)継続的に凝集細胞および,その下顎体との融合部位,下顎窩に発現する遺伝子を同定した後,凝集細胞のみに発現する分子をin situ hybridization法および免疫染色により選出して,その分子のレポーターマウスを作成する.(2)顎関節誘導部位の同定:凝集細胞は,その細胞自身が産生するシグナルか,もしくは周囲組織からのシグナルにより分化する可能性がある.そこで,作成した凝集細胞-レポーターマウスのレポーター分子発現領域の周囲を,近遠心軸と頬舌軸で6分割し,組織塊として取り出す.これに凝集細胞組織を加えた7つの組織塊を,マウス胎仔早期四肢芽由来細胞の凝集ペレットとrecombination法で再結合させ,培養する.培養後,顎関節の誘導を形態学的・分子学的に確認する.(3)凝集細胞誘導部位における発現遺伝子の同定:(2)で凝集細胞誘導能があると判定された部位に発現する遺伝子を同定する. 2.同定分子の機能解析 同定遺伝子の機能解析:(1)上記で同定した分子の分子生物学・薬理学的手法による補正により,正常マウスの顎関節に異常が生じるか,回転ドラム方式と頭部部分器官培養の併用法アッセイにより追求する.凝集細胞発現前の正常マウス顎関節予定領域を培養し,各分子を増幅,または減少させた場合の顎関節形成における変化を,免疫組織学,qPCR,in situ hybridization法,western blot法にて確認する.kidney transplantation法で石灰化を促した骨・軟骨形成の解析も併用する.(2)in uteroアッセイによる追求を行う.(1)で変化のあったagonistもしくはantagonistを母親マウスへ腹腔内投与し,仔マウスの顎関節に変化が生じるか,(1)の方法にて検索する.研究成果をGordon Conference(米国)にて発表する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度,研究室の移転等の関係で,一時的に研究が停止したため,予定通りに使用することができなかった消耗品・旅費が生じた.
|
次年度使用額の使用計画 |
研究室の最終移転が終了して研究環境はこれまで以上に整備され,実験は順調に進んでいる.本年度は昨年度分も合わせた実験の遂行・予算執行が可能なように,前述の推進方策を計画した.この推進方策に従って,必要な実験動物,試薬等の消耗品類を購入する.また国内学の学会における成果発表の旅費に充てる.
|