研究課題/領域番号 |
15K15675
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
丸山 史人 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30423122)
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研究分担者 |
中川 一路 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70294113)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | CRISPR / A群レンサ球菌 / 進化 / 多様化 / 病原細菌 |
研究実績の概要 |
CRISPRは遺伝子間領域であることから進化的な特定の変異圧がなく、恒常的な高発現をさせることで変異および記憶の脱落を起こさせない (予備解析では、変異は無い)、同一部位に必ず取込まれるため配列の導入が簡易である、という利点を有すると考えた。そこで、申請者らは、レンサ球菌属種のCRISPR/Casに着目し、新規細菌記憶装置開発の基盤構築に着手した。本年度は、S. pyogenes、S. suis 1,000株以上のCRISPR/Casの配列情報を取得した, また、CRISPRに含まれる外来因子情報から、過去に取込まれた外来因子の全貌を明らかにし、CRISPRのタイプ分け、配列取込みに必要なPAM配列の決定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CRISPR/Casは、2007年に「細菌の獲得免疫機構」であることが実験的に証明されてから (Science)、急速に研究が発展してきた。さらに、2012年にS. pyogenesのCRISPR/Casが従来のゲノム編集に比べて、容易に遺伝子破壊を可能にしたことから (Science)、現在急速に研究が進められている。CRISPR/Casには3つのタイプが存在しているが、外来因子の取込みに必要なモチーフ (PAM) が判明している種は極めて限定されている。さらに、そのモチーフを決定する因子は明らかとなっていない。現在、外来DNAの取込みに必要な遺伝子はcas1, 2ということまでは判明しているが、cas1,2のどのアミノ酸配列がPAMの認識に関与しているのかは明らかとされていない。そこで、ほとんど着目されていない外来DNA取込み機構を情報的、実験的に明らかとし、高効率な細菌記憶装置として利用するというアイディアは、斬新である。また、申請者らが、これまで取り組んできたS. pyogenesのCRISPR/Casは、現在、最も頻繁にゲノム編集で用いられているものであり、他の研究者の情報も最大限に利用することが可能なことも、世界に先駆けて申請者らが成果をだすうえで優位に立っていると言える。そのため、十分量のゲノム配列を得られていることから、順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
27年度に、十分な精度で配列決定できなかった株について、MiSeqおよび従来のSangerシーケンサーを用いて、配列決定を行う。既に申請者らは、レンサ球菌で恒常的に発現するプロモーターを保有しているので、これをCRISPR/Cas領域に組込む (CRISPRとcasは別々に転写されるため、両者に挿入する)。これにより、効率よくcasが外来因子を効率的に取込ませる。また、同様に、CRISPRについても恒常的に発現させることで、取込まれたスペーサー配列の脱落を抑える。そして、上記のにより予測されたcas1, 2配列のうちPAM配列に影響を与えると考えられた配列にランダムな配列を組込む。作製した菌株を用いることで、効率的にPAM配列が変わった、特に1塩基のPAM配列で取込む株を完成させる (A, T, G, Cの各1塩基、4株)。また、取込み配列の偏りたないことを確認する。これにより、本研究目的は達成できたものと判定する。
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