研究実績の概要 |
A群レンサ球菌S. pyogenesのゲノム上のCRISPR配列を詳細に調べて、どのような特徴を有するのかを詳細にしらべた。これには丸山らが独自に取得したゲノム配列として、高病原性株由来の90株、乳幼児咽頭炎由来株の151株をもちいた。さらに、遺伝子データベースのドラフトゲノム配列の601株、181株、そして、完全ゲノム配列が既知の18株を合わせた約1,000株の配列について、CRISPR/Casの予測を行った。この259株で、どのような外来因子や、取込まれる配列に偏りがあるかを調べるために、CRISPR内の外来因子全長の再構築法を検討した。これらの結果、A群レンサ球菌のスペーサーは抗原型以上に細かなタイピングが行える程度の多様性はあるものの、取り込まれたファージ全長の再構築に十分な多様性がないことが判明した。 一方、これまでに実施した動物衛生研究所との共同研究からS. suisでは全てのserotypeにおいて (35株)、本菌のCRISPRはゲノム上の決まった一箇所にあることがわかっている 。さらに、独自のプライマーを用いてさらに70株を追加して、CRISPRの存在を確かめたところ、この知見が正しいことが確認できた。しかし、詳細に調べてみたところ、これまで数多くの細菌ゲノム解析が行われてきたにも関わらず、全く報告のなかった新奇「A locus encoding variable defence systems against invading DNA」の存在を認めることができた、そして、このゲノム部位が種内系統を説明できる、さらなる展望として、種内多様性を引き起こしている可能性を提示できたことは、予想外の結果ではあるが、細菌の多様化に新しい側面を照らす重要な成果だといえる。
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