研究課題
シェーグレン症候群(SS)をはじめとした自己免疫疾患の多くは閉経期移行の女性に発症することが知られており、エストロゲンが免疫システムに重大な影響を及ぼしているものと考えられている。本研究では、SSの病態発症に重要なエストロゲン関連因子を応用して、SSの新たな診断法の開発を目指すことを目標としている。平成27年度は新たな病理組織検査あるいは臨床検査法の開発として、小唾液腺や血液に加え、脂肪組織、涙液あるいは唾液におけるエストロゲン関連分子の検出による診断法の確立を目指した。これまでに、SSの標的臓器においてエストロゲン欠損状態になると発現が上昇する遺伝子としてRetinoblastoma-associated protein 48 (RbAp48)を同定している(J Exp Med 2008)。この分子がタンパクレベルでSS患者に高い発現を示していることを報告しているが、患者の臨床症状や病理組織所見との関係は未だ不明な点が多い。RbAP48タンパクの発現とSSの病理組織学的評価の相関を検討したところ、RbAP48の発現と病理スコアは相関関係があり、新たな診断技術の開発につながるものと考えられた(現在投稿準備中)。SS患者の脂肪組織とアロマターゼの関係性を探る目的で、脂肪組織と病理組織評価、臨床症状の関連性を検討すると、小唾液腺組織の脂肪化およびMCP-1陽性マクロファージ数と病理組織評価に相関関係が見出された。さらに、エストロゲンの欠乏したSSモデルマウスの血中にケモカインの一つが高い濃度で存在していることが判明し、そのケモカインと病態との関連性を検討している。唾液、涙液を用いた新たな診断法の確立に関しても検討を進めている。
2: おおむね順調に進展している
SSの新たな病理組織診断法の確立に関しては、RbAp48あるいはIL-18,IFN-gなどを用いた新たな病理組織診断技術の確立を目指し、RbAp48を用いた場合SS患者の約30%程度が強く発現していることが明らかとなった。また、脂肪組織を用いたSSの新たな診断法の確立に関しても、大きく発展した。モデルをもしいた血中ホルモンの動態解析、血中あるいは唾液中の分子を用いたSSの新たな臨床検査法の開発に関しても、現在ケモカインに焦点を当てて検討中である。
SSモデルマウスから得られたエストロゲン関連分子を用いた新たな診断マーカーの探索を進めており、具体的に幾つかのマーカー、検出技術の開発を進めているところであり、平成28年度内に当初の目標に大きく近づくものと考えられる。現在、RbAp48を用いた簡便な検査技術の開発、脂肪組織を用いた新たな診断法の確立、血清中のケモカインを中心とした診断マーカーの検討を実施している。SSの新たな診断法の確立を目指しており、臨床応用可能な研究が進展するものと考えられる。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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