研究課題/領域番号 |
15K15677
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
久木田 敏夫 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (70150464)
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研究分担者 |
久木田 明子 佐賀大学, 医学部, 准教授 (30153266)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / 病的骨吸収 / 膜表面分子 / プロテオミクス |
研究実績の概要 |
炎症に伴う病的な骨破壊の場に於いて、高度に活性化された破骨細胞は正常に骨改造を営む破骨細胞とは異なる分化状態にあるものと考えられ、破骨細胞の膜表面分子の発現パターンに違いがあるものと推定される。本研究では病的に高度な骨破壊能を獲得した破骨細胞が特異的・選択的に高発現する膜表面分子群を、最新のプロテオミクス的方法論と免疫学的手法を駆使して網羅的に検索することを第1の目的とした。まず、病的に高度の骨破壊能を有する破骨細胞が形成する条件を詳細に検討した。様々な条件を検討した結果、炎症性サイトカインIL1βの存在下で形成される破骨細胞に非常に高度な骨吸収能を認めることができた。酸感受性蛍光プローブを用いたイメージング解析の結果、IL1β存在下で形成された破骨細胞が象牙質表面に向けて活発に酸を分泌することが明らかになった。キンドリン3というタンパク質はインテグリンβ鎖に結合しインテグリンを活性化させる能力をもつ蛋白質であり、正常な破骨細胞の機能発現に重要であることが報告されている。そこで、IL1β存在下に形成された破骨細胞と正常破骨細胞のキンドリン3のタンパク質発現を検討したところ、IL1β処理により顕著にキンドリン3の発現が抑制されることを見出した。現在、キンドリン3の発現低下と破骨細胞の病的活性化との関連性をh詳細に検討している。更に、IL1β存在下に形成された病的に活性化された破骨細胞の膜表面分子をビオチン化し、可溶化後、アビジンカラムによる精製を行なったものを電気泳動し、質量分析を行なうことにより、IL1β特異的に破骨細胞膜表面に発現誘導される分子の網羅的検索と同定を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、骨破壊能が非常に高い破骨細胞を形成する条件を検討し、酸感受性蛍光プローブを用いた骨吸収のイメージング解析も用いて、病的活性化破骨細胞を試験管内でルーチンに形成させる条件を確立することができた。本研究の主たる目的である「プロテオミクス的手法による破骨細胞病的活性化関連膜表面分子の検索・同定」を実施しているところである。破骨細胞の活性化刺激に対応して発現する膜表面分子の検索には時間をかけてじっくりと検討する必要があり、当初の研究計画より、遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
破骨細胞活性化の指標となる膜表面分子の検索・同定は時間をかけて確実に行なう必要がある。複数の段階を着々とクリアしており、今年度中に結果を出せるものと考えている。律速段階はプロテオミクス法による膜表面分子の同定であるが、細胞表面のビオチン化の効率を最大限に高めることと、膜分子の可溶化、そしてアビジンカラムによる精製条件を最適化することにより、病的活性化破骨細胞に特異的な膜表面分子を同定していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、骨破壊能が非常に高い破骨細胞を形成する条件を確立し、酸感受性蛍光プローブを用いた骨吸収のイメージングの解析により、病的活性化を確認することができた。プロテオミクス的手法による破骨細胞病的活性化関連膜表面分子の検索を行なっているが、当初の計画に比べ、相当な時間を要することが分った。破骨細胞の活性化刺激に対応して発現する膜表面分子の検索も時間をかけてじっくり条件検討する必要があり、当初の研究計画より遅れている。
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次年度使用額の使用計画 |
次の事柄を実施する。1)破骨細胞活性化の指標となる膜表面分子の検索・同定を行なう。2)律速段階であるプロテオミクス法による膜表面分子の同定を行なう。3)細胞表面分子のビオチン化効率を最大限に高める。4)膜分子の可溶化及びアビジンカラムによる精製条件等を最適化する。5)病的活性化破骨細胞に特異的な膜表面分子を同定する。
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