研究課題/領域番号 |
15K15679
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
二藤 彰 鶴見大学, 歯学部, 教授 (00240747)
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研究分担者 |
江面 陽一 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (50333456)
荒木 良子 国立研究開発法人放射線医学総合研究所, 研究基盤センター, 室長 (40392211)
中島 和久 鶴見大学, 歯学部, 講師 (90252692)
島田 明美 鶴見大学, 歯学部, 講師 (00339813)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 腱細胞 / 靱帯細胞 / 遺伝子発現 / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
解剖学的には骨と筋、あるいは骨と骨をつなぐ組織をそれぞれ腱、靱帯と呼ぶが、細胞・分子レベルでの違いについては不明な点が多い。本研究では腱・靱帯を見分けるmolecular signature(発現分子の差)があるかという課題にとり組んでいる。マウスを用い、解剖学的に容易に見分けのつく、長趾屈筋腱と膝内側側副靱帯それぞれの組織ならびに細胞を分離し解析を進めた。まずそれぞれの組織由来からの遺伝子発現解析で、scleraxis, tenomodulin, type I collagen の発現レベルに差があり、それぞれについて腱組織のほうが靱帯組織より発現レベルが高いことを確認した。また我々が開発したコラーゲンゲル内初代培養法により、腱組織のみならず、靱帯細胞の培養が可能であることを確認した。さらに、in vitroで培養したそれぞれの細胞に対して力学的負荷を与えるために、cyclicなメカニカルフォースを一定時間加える装置を用い、それらの細胞の状態を観察し、さらに遺伝子発現を解析した。腱細胞では力学的負荷に応じて分化マーカーの発現が上昇することを見出した。一方靱帯細胞では力学的負荷を与えると、培養皿からはがれることから、遺伝子発現解析にまでは至っていない。さらにmolecular signatureをゲノムワイドに解析するために、腱組織、靱帯組織、腱細胞、靱帯細胞それぞれからRNAを抽出し、RNAseq解析を進めた。その解析で変化が大きかった遺伝子についてリアルタイムPCRによる発現解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではin vivoの腱と靱帯組織を分離し、それぞれの遺伝子発現の比較をすることで、差として見えるものをmolecular signatureの候補とすることを目指している。すでにいくつかの分子において発現の差があることを見出しており、候補にはいる可能性のある分子が得られつつある。さらにコラーゲンゲル培養法で腱・靱帯細胞の培養条件を確立することもできた。細胞の外部からの力学的負荷を加える実験にも着手し、すでにいくつかの遺伝子発現の変動を確認した。したがって、研究計画書に従った結果が蓄積しつつあり、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
まずmolecular signatureの候補と考えられる分子の絞り込みを行う。そのためにRNAseq解析で可能性の高い分子として得られたものを、in vitro でリアルタイムPCR解析により、発現量の差が十分であるかを確認する。そのことで絞り込めた分子については in vivoでの局在を調べるため、生体内の発現部位を胎児を用いたwhole mount in situ にて調べ、腱あるいは靱帯に局在するか否かを検討する。コラーゲンゲル培養法で腱・靱帯細胞の培養条件を確立することはできたが、靱帯細胞は継代することが難しく、また力学的負荷を与えた場合の培養安定性も難しい。力学的負荷時の腱、靱帯細胞の応答性を調べるためには、靱帯細胞の培養安定性をはかる条件の探索が必要であると考えており、その実験条件の検討も行う予定である。
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