骨構成細胞の約90%を占める骨細胞は、骨の恒常性のみならず、全身の臓器に影響をおよぼす内分泌性の細胞であるという認識が急速に広まりつつある。これまで、骨細胞特異的な遺伝子欠損マウス作製のためのCreマウスとしてはDmp1-Creが使用されてきた。しかしながら、近年の報告から、Dmp1-Creは骨細胞だけにとどまらず、前段階の成熟・後期骨芽細胞や筋細胞でもCreが発現してしまうことが指摘されている。本研究では、申請者が世界に先駆け確立した骨細胞単離培養系から得られた、骨芽細胞から骨細胞への分化過程のトランスクリプトーム・プロテオーム解析と他臓器での発現データベース解析により、骨細胞に限局して発現する遺伝子を同定し、真に骨細胞特異的なCre発現マウスの樹立を目標とする。 本年度までに、Dmp1-CreマウスとCAG-CAT-EGFPマウスを交配することで、骨細胞・後期骨芽細胞でのみEGFP陽性となるマウスを樹立し、骨の酵素処理ののち骨芽前駆細胞・前期骨芽細胞(EGFP陰性)と骨細胞・後期骨芽細胞(EGFP陽性)をFACSによって分取し、それぞれの細胞からRNAを回収後、トランスクリプトーム解析を行い、骨細胞特異的発現遺伝子を絞り込みを完了した。さらに、内在遺伝子プロモーターを利用し、当該骨細胞特異的発現遺伝子プロモーター領域直後にCre遺伝子をノックインする方法でマウスを作製し、F1マウスが得られた。
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