研究課題/領域番号 |
15K15689
|
研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
岡部 幸司 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (80224046)
|
研究分担者 |
岡本 富士雄 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (60153938)
福島 秀文 東北大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (70412624)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | TRPM7 / 破骨細胞 / Mg2+代謝機構 / コンディショナルKOマウス |
研究実績の概要 |
Mg2+は生命現象に不可欠な因子であり、その65%は骨に蓄積されているにも関わらず、骨におけるMg2+代謝機構の詳細は不明である。本研究は破骨細胞を介するMg2+代謝機構に焦点を当て、そのMg2+輸送に関わる新規分子として、我々が破骨細胞に発見したキナーゼ活性を有するユニークなMg2+透過型陽イオンチャネルであるチャネルキナーゼTRPM7 に注目し、この分子のMg2+輸送機構とこれに続く骨吸収機能調節や生体Mg2+恒常性調節への関与をin vitro 実験系と我々が開発した破骨細胞特異的TRPM7 コンデョショナルKO マウスやTRPM7 キナーゼ変異マウスを用いたin vivo 実験系で解明することにある。 マウスの破骨前駆細胞や分化した破骨細胞を調整し、パッチクランプ法を用いてTRPM7 を介する陽イオン電流を検索した結果、外液の酸性化で活性化され、TRPM 阻害薬(2APB、carvacrol等)や外液Mg2+の存在により抑制されるTRPM7様の陽イオン電流が優位に存在した。また、TRPM7-floxマウスと破骨細胞特異的タンパクCreマウスの交配により、破骨細胞特異的TRPM7コンディショナル欠損マウスが作製に成功した。現在、このKOマウスにカルセインを投与し、骨形成や骨吸収機能を骨形態計測の手法を用いてin vivo解析し、骨リモデリングにおける破骨細胞TRPM7の役割の検討を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、当初の計画に沿って下記①~③の実験を実施し実績を得た。 ① パッチクランプ法を用いて、マウスの破骨前駆細胞や分化した破骨細胞に優位にTRPM7様イオン電流が存在することが同定された。②TRPM7-floxマウスと破骨細胞特異的タンパクCreマウスの交配により、破骨細胞特異的TRPM7コンディショナル欠損マウスが作製に成功した。③ KOマウスにカルセインを投与し、骨形成や骨吸収機能を骨形態計測の手法を用いてin vivo解析し、骨リモデリングにおける破骨細胞TRPM7の役割の検討を進めている。 以上の①と②に関しては、研究計画上、充分な研究結果が得られており、③に関してはコンディショナルKOマウスを解析中である。従って、平成27年度の研究計画の達成度はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27 年度に得られた結果を基にして、以下の計画を進める。 ① Mag-fura-2 やFura-2を用いたMg2+やCa2+イメージング法を併用し、破骨細胞TRPM7 を介するMg2+やCa2+透過性電流と細胞内Mg2+及びCa2+濃度変化との直接的な連携機構を検討する。このMg2+/Ca2+輸送解析において、TRPM7のM Mg2+/Ca2+輸送やそのαキナーゼ活性が、PIP2やPLC 系シグナル等の下流シグナル分子により制御系をうけるかどうかを検討する。次に、TRPM7 抗体を用いた免疫染色により視覚化し、細胞分化におけるTRPM7 の細胞内局在(細胞膜、小胞体、ruffled border 等)の変化、破骨細胞の接着分子であるインテグリンやアクチン分子との共発現等を共焦点レーザー顕微鏡を用いて解析する。② 破骨細胞特異的TRPM7コンディショナル欠損マウスにカルセインを投与し、骨形成や骨吸収機能を骨形態計測の手法を用いてin vivo解析し、骨リモデリングにおける破骨細胞TRPM7の役割を検討する。②TRPM7 コンディショナル欠損マウスより破骨細胞を誘導し、平成27年度計画の①と同様の解析を行う。この破骨前駆細胞を用いて、TRPM7 分子のMg2+/Ca2+輸送機能や細胞機能を更に検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に次年度使用額が生じた理由として、当初計画として、TRPM7トランスジェニックマウスを作製のために必要な費用や飼育費等に予算を支出することで進めていたが、実験動物メーカーからの遺伝子情報の導入等がずれ込んでいるため、これらに関わる経費が次年度使用額となった。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、残りのTRPM7トランスジェニックマウス作製や動物飼育経費、及び種々の試薬やTRPM7コンストラクトの作製費用等に、次年度使用額と合わせて使用していく予定である。
|