研究課題
Mg2+は生命現象に不可欠な因子であり、その65%は骨に蓄積されているにも関わらず、骨におけるMg2+代謝機構の詳細は不明である。本研究は破骨細胞を介するMg2+代謝機構に焦点を当て、そのMg2+輸送に関わる新規分子として、我々が破骨細胞に発見したキナーゼ活性を有するユニークなMg2+透過型陽イオンチャネルであるチャネルキナーゼTRPM7 に注目し、この分子のMg2+輸送機構とこれに続く骨吸収機能調節や生体Mg2+恒常性調節への関与をin vitro 実験系と我々が開発した破骨細胞特異的TRPM7 コンデョショナルKO マウスやTRPM7 キナーゼ変異マウスを用いたin vivo 実験系で解明することにある。TRPM7-floxマウスと破骨細胞特異的タンパクであるカテプシンK-Creマウスの交配により、破骨細胞特異的TRPM7コンディショナル欠損マウスが作製に成功した。このKOマウスにカルセインを投与し、骨形成や骨吸収機能を骨形態計測の手法を用いてin vivo解析し、骨リモデリングにおける破骨細胞TRPM7の役割を検討した。その結果、若い週齢マウス(8週)では、破骨細胞数が減少する傾向は認められたが優位差は認められなかった。一方、加齢マウス(30週)では、破骨細胞数や骨吸面の低下と共に、骨梁の増加が認められた。従って、TRPM7が加齢に従って破骨細胞を介する骨吸収や骨リモデリングに重要な役割を果たすことが明らかとなってきた。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度は、当初の計画に沿って下記の実験を実施し実績を得た。TRPM7-floxマウスと破骨細胞特異的タンパクであるカテプシンK-Creマウスの交配により、破骨細胞特異的TRPM7コンディショナル欠損マウスが作製に成功した。このKOマウスにカルセインを投与し、骨形成や骨吸収機能を骨形態計測の手法を用いてin vivo解析し、骨リモデリングにおける破骨細胞TRPM7の役割を検討した。その結果、若い週齢(8週)では優位差が認められなかったが、加齢マウス(30週)では、破骨細胞数や骨吸面の低下と共に、骨梁の増加が認められた。従って、TRPM7が加齢に従って破骨細胞を介する骨吸収や骨リモデリングに重要な役割を果たすことが明らかとなってきた。以上に関しては、研究計画上、充分な研究結果が得られており、平成28年度の研究計画の達成度はおおむね順調に進展していると考えられる。
平成28年度に得られた結果を基にして、以下の計画を進める。① 平成28年度結果より、TRPM7コンディショナル欠損マウスの加齢週齢(30週)において変化が認められた。従って、加齢マウスの破骨細胞TRPM7 を介するMg2+やCa2+透過性電流と細胞内Mg2+及びCa2+濃度変化との直接的な連携機構を検討する。また、TRPM7 欠損マウスやノックダウンした破骨細胞を象牙切片上に培養し、吸収窩面積を測定すると共に、基質から破骨細胞が溶出した培養液中のMg2+濃度変化をMg2+指示薬を用いて吸光度測定により解析し、破骨細胞TRPM7 による血清Mg2+恒常性の調節機構を検討する。② 加齢マウスの血清を採集し、Mg2+指示薬を用いて吸光度測定によりMg2+濃度を測定すると同時に、骨基質中に含まれるMg 量を測定し、野生型マウスとの違いを比較検討する。また、変化が明瞭でない場合は、低Mg2+食での飼育環境においての同様の動態も含め検討する。③ 加齢により破骨細胞におけるTRPM7機能の重要性が明かとなったことより、TRPM7のキナーゼ活性欠失型マウスを30週齢まで飼育し、骨形態解析等を行い、キナーゼ機能との連関を検討する。以上をまとめて、成果報告につなげる。
平成28年度に次年度使用額が生じた理由として、当初計画として、追加で必要となったTRPM7コンディショナル欠損マウスの骨形態解析の費用や飼育費等に予算を支出することで進めていたが、実験動物の繁殖がずれ込んでいるため、これらに関わる経費が次年度使用予定額となった。
平成29年度は、TRPM7コンディショナル欠損やキナーゼ活性欠失型マウスの骨形態解析等に、次年度使用額と合わせて使用していく予定である。
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