研究課題/領域番号 |
15K15691
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
中浜 健一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (60281515)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | がん細胞 / ギャップジャンクション |
研究実績の概要 |
本研究の目的はがん細胞と正常細胞とのコネキシン43(Cx43)を介する細胞間コミュニケーションが双方の細胞に及ぼす影響を調べることでギャップジャンクションのがん抑制メカニズムを解明することである。本研究で得られて結果を以下に示す。 1、前年度、FRAP(Fluorescence Recovery after Photobleaching)法を用いた実験によりC6グリオーマ細胞間ではギャップジャンクションが形成されないことを確認したが、本年度FACSを用いた解析ではC6グリオーマ細胞間においても若干の細胞間コミュニケーションが認められた。しかしながらCx43を発現させたC6グリオーマ(C6Cx43)間のコミュニケーションはその伝達速度において明らかな亢進が認められた。これらのことから、C6グリオーマ間にわずかに認められたコミュニケーションは生理的に意味があるかどうか疑問であると考えられた。 2、C6グリオーマと正常細胞間のコミュニケーションを完全に遮断するため、Cx43flox/floxマウスからアストロサイトの培養を行い、Creリコンビナーゼを発現させることでCx43ノックアウト細胞(AstroCx43KO)の樹立を行った。さらに、C6グリオーマ細胞のCx43をノックアウトした細胞(C6Cx43KO)を樹立するため、Crispr/Cas9システムに用いるガイドRNAの設計を行いCas9発現ベクターに挿入しているところである。 今後の研究の展開 これまでに、様々な予期せぬ障害があり思うように実験が進まなかったが、C6Cx43KO、AstroCx43KO、C6、正常アストロサイトを用いた共培養でそれぞれの細胞の形質変化を網羅的な遺伝子発現解析およびmiRNA解析により明らかにしていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画ではギャップジャンクションを介した低分子の移動を可視化する予定であったが、グルコースや核酸の移動を検出する方法についてなかなか解決策が見つからず時間を費やしてしまった。そこで、まず正常細胞とがん細胞の細胞間のコミュニケーションの有無による双方の細胞の形質変化を調べることとした。研究開始1年目にはFRAP法を用いた実験結果よりC6グリオーマには細胞間コミュニケーションはないと判断したが、その後FACSを用いた定量的解析により僅かながらC6グリオーマ同士にもコミュニケーションがあるのではないかと判断される結果を得た。これらの結果から、がん細胞-正常細胞間コミュニケーションを解析するにはCx43KO細胞が必要であることがわかり、現在その細胞樹立を行っている。幸い我々はCx43floxマウスを飼育しており、このマウス由来のアストロサイトを用いることでCx43KO細胞が得られる。また、C6グリオーマのCx43をCrispr/Cas9システムを用いてノックアウトする予定である。これらの細胞が樹立されれば、FACSを用いて正常細胞とコミュニケーションしたがん細胞と正常細胞とコミュニケーションをしていないがん細胞を分取し、その形質を網羅的遺伝子発現解析法を用いて調べることが可能となり、飛躍的に研究が進むと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は正常アストロサイトとC6グリオーマ間のギャップジャンクション有無による細胞形質の変化を捉え、がん細胞に対するコミュニケーションの作用を明らかにしたい。具体的には、C6Cx43KO細胞&アストロサイト、C6細胞&アストロサイト、C6Cx43細胞&アストロサイトの各共培養を行った後にそれぞれの細胞をFACSにより分取し、網羅的な遺伝子発現解析をおこなう。得られたデータを解析することにより、ギャップジャンクションが各々の細胞に及ぼす形質変化を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画ではギャップジャンクションを介した低分子の移動を可視化する予定であったが、グルコースや核酸の移動を検出する方法についてなかなか解決策が見つからず時間を費やしてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
正常アストロサイトとC6グリオーマ間のギャップジャンクション有無による細胞形質の変化を捉え、がん細胞に対するコミュニケーションの作用を明らかにしたい。具体的には、C6Cx43KO細胞&アストロサイト、C6細胞&アストロサイト、C6Cx43細胞&アストロサイトの各共培養を行った後にそれぞれの細胞をFACSにより分取し、網羅的な遺伝子発現解析をおこなう。得られたデータを解析することにより、ギャップジャンクションが各々の細胞に及ぼす形質変化を明らかにする。
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