研究課題/領域番号 |
15K15692
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
林 孝文 新潟大学, 医歯学系, 教授 (80198845)
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研究分担者 |
勝良 剛詞 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (30283021)
新国 農 新潟大学, 医歯学系, 助教 (80419316)
中山 美和 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (10609879)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超音波診断 / 舌癌 / 初期癌 / エラストグラフィ / ドプラ / 筋層浸潤 / 舌エコー / 高分子ゲル音響カップリング材 |
研究実績の概要 |
2013年1月から2014年12月にかけてエラストグラフィを施行した初期舌癌患者25例を対象としてretrospective studyを行った。内訳は女性10例、男性15例で、年齢は最低38歳、最高85歳、中央値64歳であった。病理組織学的には扁平上皮癌が20例、上皮内癌が5例で、扁平上皮癌症例のT分類はT1が7例、T2が13例であった。超音波診断装置本体には日立メディコ社製Preirusを使用し、探触子にはホッケースティック型の7-13Mz術中用小型探触子を使用した。舌エコーは、探触子表面に厚み3mmあるいは5mmの高分子ゲル音響カップリング材を装着し、探触子保護のためラップでカバーして腫瘍表面にあてて施行した。まず通常のBモードを施行し、粘膜上皮層と連続性のある低エコー域として描出される腫瘍領域を確認した。次いでエラストグラフィを施行し、Bモードで描出された腫瘍領域とエラストグラフィで青く表示された硬い領域との範囲の相違を評価し、病理組織学的所見における筋層浸潤の有無と比較した。その結果、病理組織学的に筋層浸潤が認められた症例(20例)では、全例でBモードにおける低エコー域とエラストグラフィで青く表示される硬い領域との範囲が不一致であり、低エコー域よりも1mm幅以上の広い範囲にエラストグラフィで硬い領域のにじみ出し所見が得られた。一方、病理組織学的に筋層浸潤が認められなかった症例(5例)では、全例でBモードにおける低エコー域とエラストグラフィで青く表示される硬い領域との範囲がほぼ一致していた。以上より、Bモードの低エコー領域とエラストグラフィの硬い領域の範囲の相違に注目することで、初期癌の筋層浸潤の有無を推測できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25症例のretrospective studyにより、病理組織学的な筋層浸潤を推測しうる可能性のある有用なエラストグラフィ所見を得ることができ、本研究の成果について複数回の国内学会発表と国際学会での招待講演を行い、和文誌に掲載され、国際誌への投稿準備を整えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
臨床症例をさらに増やすとともに、以前の症例も含めてエラストグラフィに加えてドプラ所見についてのretrospective studyを進め、画像上の鑑別点を抽出して数値化し統計学的解析を行い、診断基準の策定に繋げる。また硬さファントムを利用し、高分子ゲル音響カップリング材の弾性参照体としての物性評価を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に高分子ゲル音響カップリング材を製造・販売を行っている企業がこれを中止し、研究途中で購入が困難となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
高分子ゲル音響カップリング材の製造・販売に関して後継の企業が決定し、現在製品について調整中であるが、平成28年度中には購入が可能となる見込みであり、弾性参照体としての精度検討に進むことができる予定である。
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