研究課題/領域番号 |
15K15692
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
林 孝文 新潟大学, 医歯学系, 教授 (80198845)
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研究分担者 |
勝良 剛詞 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (30283021)
新国 農 新潟大学, 医歯学系, 助教 (80419316)
中山 美和 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (10609879)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超音波診断 / 舌癌 / 初期癌 / エラストグラフィ / ドプラ / 舌エコー / Strain imaging |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き症例を加えて、舌初期癌に対する口腔内超音波エラストグラフィ(strain elastography)の鑑別診断における有用性に関する検討を行った。対象は2013年3月から2016年3月の間に術前に口腔内エラストグラフィを施行した舌早期癌の疑い17症例であり、性別は男性11例・女性6例、年齢は最低38歳・最高85歳(中央値67歳)であった。病変の最大径が30mmを超えるか厚み5mmを超える症例は対象から除外した。頸部リンパ節転移を有していた症例も除外した。画像解析については、エラストグラフィの動画記録から、ストレイングラフのピークを参考に静止画像を得て、病変部の低エコー域の青・緑・赤の占める面積で弾性スコア(elasticity score)を評価した。弾性スコアは、以下のとおりとした[1:(非常に軟らかい)緑と赤が優勢(70%以上)でわずかに青、2:(やや軟らかい)緑が青よりも大部分を占める(50~70%)、3:(やや硬い)青が緑よりも大部分を占める、4:(非常に硬い)青が優勢でわずかに緑]。全例に外科的切除術が施行され、その病理組織学的診断は、扁平上皮癌12例、上皮内癌3例、ウィルス性口内炎1例、膿原性肉芽腫1例であった。扁平上皮癌と上皮内癌をcarcinoma群、ウィルス性口内炎と膿原性肉芽腫をnon-malignant群に大別して弾性スコアについて検討した結果、弾性スコアはcarcinoma群では4または3、 non-malignant群では2または1であり、群間でのオーバーラップはみられず、前者が有意に硬い傾向にあることが示唆された。以上の結果より、舌早期癌の鑑別診断において、口腔内超音波エラストグラフィが有用である可能性が示唆された。本研究の成果は、国際誌Oral Radiologyに原著論文として掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き症例を集積し、舌初期癌に対する口腔内超音波エラストグラフィ(strain elastography)の有用性に関して病理組織学的診断との比較検討を行い、鑑別診断においてエラストグラフィが有用である可能性が示唆される結果を得た。本研究の成果について関連学会にてワークショップ・セミナーでの発表を行い、国際誌に投稿し原著論文として掲載されることができた。また平成29年度の国際学会での発表と国際共同研究の展開に結びつけることができた。
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今後の研究の推進方策 |
臨床症例をさらに増やし、以前の症例も含めてエラストグラフィに加えてドプラ所見について検討を進め、画像上の鑑別点を抽出して数値化し統計学的解析を行い、診断基準の策定に繋げる。またアジアを中心とした国際共同研究の基盤を構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度途中で製造中止のために購入できなかった高分子ゲル音響カップリング材については、後継の業者による製造・販売の継続が決定し、研究に必要な分量は購入できた。またエラストグラフィによる舌初期癌の鑑別診断の有用性について国際誌への投稿・掲載まで進んだが、ドプラ画像の解析とエラストグラフィとの統合については次年度に持ち越しとなっている。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究の最終目標であるエラストグラフィとドプラとの統合とその有用性の検討について、パーソナルコンピュータと解析ソフトウェアを導入して解析を行い、学会にてその結果を公表し論文を投稿する。また高分子ゲル音響カップリング材は引き続き必要な分量を購入する予定である。
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