研究課題/領域番号 |
15K15692
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
林 孝文 新潟大学, 医歯学系, 教授 (80198845)
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研究分担者 |
勝良 剛詞 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (30283021)
新国 農 新潟大学, 医歯学総合病院, その他 (80419316)
中山 美和 愛知学院大学, 歯学部, 助教 (10609879)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | depth of invasion / 粘膜上皮 / 口腔内超音波診断 / 口腔癌 / 音響カップリング材 |
研究実績の概要 |
改定されたAJCC、UICCにおいて、口腔癌のTMN分類におけるT分類にdepth of invasion (DOI)の概念が加わった。このため追加実験として超音波ファントムを用いて口腔内走査を想定した撮像を行い、本研究遂行に必要な粘膜上皮層に関する検討を行うこととした。ファントムは内部均一な高エコーを呈する本体の表面に厚み0.5 mm、1.0 mm、3.0mmに設定した内部無エコーの模擬粘膜上皮層を積層した。音響カップリング材には高分子ゲル音響カップリング材と寒天ゲル音響カップリング材、ラップにはpolyvinylidene chloride製、polyethylene製、polymethylpentene(PMP)製を用いた。術中用小型リニア探触子の走査面に音響カップリング材をのせ、全体をラップで包んで撮像した。その結果、寒天ゲル音響カップリング材とPMPの組み合わせ以外では、表面反射層が観察され、また厚み3.0 mmの模擬粘膜上皮層内部にアーチファクトと考えられる線状高エコー構造が描出された。高分子ゲル音響カップリング材ではラップの種類に関わらず模擬粘膜上皮層が無い場合でもファントム表面に線状低エコーが生じた。模擬粘膜上皮層はいずれも実際よりも薄く計測される傾向にあったが、寒天ゲル音響カップリング材とPMPとの組み合わせが最も実際の厚みを正確に評価しうることが示唆された。高分子ゲル音響カップリング材の場合、ラップの種類に関わらず音響陰影と推察される線状低エコーが生じ、表面反射層と併せた範囲はアーチファクトにより正確な描出がなされず、これまで粘膜上皮層として報告しされてきた線状低エコーは、アーチファクトを含む可能性が示された。一方、寒天ゲル音響カップリング材とPMPの組み合わせではこうしたアーチファクトがほとんど生じなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は国際的な口腔癌のTNM分類が改定され、これに適合するように研究手法を再検討してファントム実験により追加検討を行った結果、舌エコーに用いる音響カップリング材について新規開発に繋がることが期待できる非常に興味深いデータが得られたため、引き続き1年間の延長でこれを再検証し舌エコーのエラストグラフィ像とドプラ像の統合解析への応用と治療戦略見直しへの反映について検討することとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度のファントム実験の成果を取り入れ、高分子ゲル音響カップリング材に加えて寒天ゲル音響カップリング材の有効性も引き続き比較検討し、臨床症例をさらに増やしてエラストグラフィ像とドプラ像の統合について検討を進め、診断基準の策定に繋げる。また平成29度より開始した香港大学との共同研究についても引き続き継続展開し、国際共同研究の基盤を構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は国際的な口腔癌のTNM分類が改定され、これに適合するように研究手法を再考しファントム実験により追加検討を行うこととなった。その結果、高分子ゲル音響カップリング材に加えて超音波ファントムとともに他の材料を購入し実験を行ったが、予定よりも高分子ゲル音響カップリング材の使用量が少なくなったため次年度使用額が生じた。 使用計画としては、本研究の最終目標であるエラストグラフィとドプラとの統合とその有用性の検討について、平成29年度の研究成果を取り入れて1年間の延長期間に再検討し解析を行い、学会にてその結果を公表し論文を投稿する。高分子ゲル音響カップリング材は引き続き必要な分量を購入する予定である。
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