研究課題/領域番号 |
15K15693
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
朔 敬 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40145264)
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研究分担者 |
程 クン 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (40207460)
丸山 智 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (30397161)
山崎 学 新潟大学, 医歯学系, 助教 (10547516)
阿部 達也 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (70634856)
田中 昭男 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (10121823)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 病理学 / 実験腫瘍学 / 口腔扁平上皮癌 / ヘモグロビン誘導 / 角化機序 |
研究実績の概要 |
1) 本学病院と当研究室の病理診断ファイルに登録された口腔癌の外科摘出例について病理組織学的に再検討し、臨床データと対比しながら、同一病変内に異型上皮、上皮内癌を含む口腔粘膜原発扁平上皮癌症例を選択し、免疫組織化学とハイブリッド組織化学に供するべく、それらのパラフィン連続切片を作製した。また関連病変として角化異常の生じる口腔扁平苔癬症例についても収集準備を行った。
2) 上記のパラフィン連続切片を用いて、口腔粘膜組織上で血管を描出する目的で、内皮細胞と内皮・周皮の基底膜マーカーについて免疫組織化学を行って、口腔粘膜上皮の正常・異型上皮・上皮内癌の病変カテゴリーごとに、血管の分布を確認した。さらにヘモグロビンやグライコフォリンA等の免疫組織化学によって出血域を、酸化ストレスによりHO-1の上昇、それに依存するPAR-2の活性化について検討し、酸化ストレスが癌細胞の活性化させている知見を得た。また、上皮内癌の乳頭型で、結合組織乳頭部の血管消失と硝子化の進行する特異症例を集積し、血管走行の三次元再構築の準備を進めた。
3) 扁平上皮癌細胞分化の判定は、パラフィン連続切片を用いて、ヘマトキシリン・エオジン染色のほか、ケラチン (K) 10、K17、K23等のケラチン分子種、インボルクリン、カスパーゼ14などの角化関連分子の免疫組織化学によって検討したが、角化領域とくに脱核・角化死細胞を可視化し、癌組織での血管走行異常と赤血球分布、溶血分布範囲、角化域ならびに脱核・角化死細胞との関連を検討した。同時に、癌真珠・角化真珠に対する間質細胞反応も解析した。また、溶血由来ヘモグロビンの扁平上皮細胞による貪食の広がりを、具体的な組織内距離、断面積、容積範囲を解析し、角化現象との関連を明らかにした。口腔扁平苔癬でも同様な検討を行い、シバット小体が口腔粘膜上皮細胞の脱核によって生じる可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本的に当初の研究の目的と計画に沿っている。口腔がんにおける細胞死と血管走行の関連を検討し、赤血球由来の酸化ストレスの意義を解明することが当初の目標であったが、その最終段階としてのPAR-2分子の発現亢進について論文発表を行い、われわれの仮説が証明されてきたところである。血管崩壊に続く赤血球の遊出による酸化ストレスという視点が口腔がん症例で実証されてきたことにより、類似の現象とその解釈が扁平苔癬などの口腔粘膜病変にも適用できることが判明したことが大きな成果であった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の計画を確実に進行させると同時に、派生的に見出した扁平苔癬症例での角化機序の解析を進めたい。プロテオーム解析ならびに三次元再構築が準備段階で止まったので、来年度はこの二つの検討を重点的に進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
上記のとおり、プロテオーム解析ならびに三次元再構築の実験のための外部への委託費用を算定していたが、具体的な着手に至らず準備段階で年度が終了したので、次年度使用額として担保した。
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次年度使用額の使用計画 |
上記とおり、プロテオーム解析ならびに三次元再構築の実験に支出する予定である。
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