口腔扁平上皮癌における角化は形態学的には皮膚型の正角化で特徴づけられ、分子レベルではケラチン17の発現亢進で規定されることを確定した。異角化特異的ケラチン17の発現は、血管外漏出した赤血球由来のヘモグロビン貪食によって惹起され、ヘモグロビン刺激は口腔扁平上皮癌細胞にケラチン17のみならず、OH-1、PAR-2、14-3-3σ、YAPなどの機能分子の発現を誘導し、細胞死経路への誘導のみならず細胞増殖と細胞遊走・浸潤性にも寄与していた。この異角化分子機序は当初は想定外の口腔扁平苔癬における細胞死誘導に適用され、角化を指標にした細胞診断への応用にまで展開し、挑戦的萌芽研究に相応しい成果となった。
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