研究実績の概要 |
口腔がんの顎骨浸潤メカニズムの解明とその制御のための指針を得ることを目的として、平成27年度はffLuc遺伝子を安定発現する骨浸潤ヒト口腔がん細胞株の樹立を行った。ffLuc遺伝子は改変型GFP遺伝子とルシフェラーゼ遺伝子を融合させることにより蛍光タンパク質と発光タンパク質の利点を併せ持つため、簡便かつ定量性のあるがんの浸潤および増殖測定が可能である。ffLuc遺伝子をpLVSINベクターに組み込み、パッケージングプラスミドとともにLentiX-293T細胞にトランスフェクションし、レンチウィルスを作製した。ffLuc発現レンチウィルスを骨浸潤能を有するヒト口腔がん細胞株、HSC-3細胞およびSAS細胞に感染させたのちピューロマイシンを用いて、ffLuc遺伝子安定発現細胞株を複数樹立した。ffLuc遺伝子の発現量を、蛍光顕微鏡による目視およびレシフェラーゼ活性の測定により行い、ffLuc遺伝子の発現が最も高かった細胞株をHSC3-ffLuc細胞およびSAS-ffLuc細胞としてクローニングした。これらの細胞を2,000,000個/ml生理食塩水になるように調整し、そのうち50μlをヌードマウス左側咬筋内に接種した。腫瘍の増殖はハンディタイプの紫外線照射器によって緑色蛍光の口腔がん細胞の増大を観察できた。約3週間後に通法にしたがってパラフィン切片を作製し組織学的検討を行った結果、SAS-ffLuc細胞を接種したマウス下顎骨および顔面骨に著明な骨浸潤像を認めた。以上の結果より、SAS-ffLuc細胞は口腔がんの骨浸潤を再現する有益な動物実験モデルとして応用可能であることが明らかとなった。
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