研究課題/領域番号 |
15K15701
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
永田 俊彦 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 教授 (10127847)
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研究分担者 |
中島 由紀子 徳島大学, 大学病院, 助教 (70709526)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 老化 / 最終糖化産物 / 歯髄 / 歯肉 / 骨 |
研究実績の概要 |
1. 歯髄細胞:ラット歯髄細胞培養系にAGEを添加すると、炎症性蛋白であるS100A8とA9、およびインターロイキン-1β(IL-1β)のmRNA発現が上昇し、この反応にはRAGE-MAPK系経路が関与しており、老化促進物質AGEの炎症促進作用は歯髄組織でも存在しうることが示唆された(2015年論文発表)。 2. 歯肉線維芽細胞:ヒト歯肉線維芽細胞培養系の高濃度グルコース条件下では、IL-6が誘導するプロテアーゼ(proMMP-1およびcathepsin-L)のさらなる上昇が観察され、老化に伴う歯肉組織の糖化が歯肉組織の破壊誘導に関与していることが示唆された(2016年国際学会発表予定)。 3. 骨芽細胞:ラット骨髄由来骨芽細胞培養系におけるAGEとP. gingivalis由来リポ多糖(P-LPS)の作用を調べた結果、AGEもP-LPSも単独でアルカリフォスファターゼ(ALP)活性と骨様結節(Bone nodule: BN)形成を抑制し、両者の同時添加ではALP活性もBN形成も相加的に抑制された。また、骨形成指標であるI型コラーゲン、オステオカルシン、Cbfa1の遺伝子発現もAGEとP-LPSによって抑制されていた。さらに、これらの反応では、炎症性因子であるIL-1βおよびS100A8のAGEとP-LPSによる上昇がmRNAレベルおよび蛋白レベルで確認された。これらの結果から、老化促進物質AGEと歯周病原因子P-LPSが協調して、骨組織の炎症因子発現を促し、骨形成能を低下させている可能性が示唆された。(2016年国際雑誌掲載決定)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯髄細胞、歯肉線維芽細胞、骨芽細胞の3つの細胞培養系を用いて、老化および病態関連指標(酸化ストレスマーカー、石灰化マーカー、炎症マーカー)の発現に及ぼすAGEの影響を比較検討する作業が概ね順調に進行している。2015年度に得られた結果は、口腔組織に由来する3種の細胞はいずれも高血糖あるいはAGEに対する応答能を有し、老化促進物質によって炎症マーカーが上昇し、石灰化マーカーは低下するという概要を明らかにすることができた。酸化ストレス指標やシグナル伝達機構など、まだデータが不充分な部分もあるが、1年目の実験経過としては概ね順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
1年目に得られた結果をもとに、歯髄細胞、歯肉線維芽細胞、骨芽細胞における老化および病態関連指標(酸化ストレスマーカー、石灰化マーカー、炎症マーカー)の発現に及ぼすAGEの影響を比較検討する作業を継続するとともに、各細胞での反応性の違いやシグナル伝達の違いを把握する。とくに、AGEの作用は歯髄細胞では石灰化促進の方向性、骨芽細胞では石灰化抑制の方向性があり、これら細胞による反面作用のからくりについてシグナル伝達機構なども調べることによって、出てくる表現型の違いを考察する予定である。さらに、老化ラット、糖尿病ラットにおけるAGE化コラーゲン量の比較も行って、実際に老化や糖化反応が口腔組織の減退につながっているかどうか生化学的に解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額は8,850円であり、1年目の予算はほぼ全額使用したが、端数が残額として残ったという認識である。
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次年度使用額の使用計画 |
8,850円は次年度の物品費として使用する。
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