1. 歯髄細胞:ラット歯髄細胞培養系にAGEを添加すると、炎症性蛋白であるS100A8とA9、およびインターロイキン-1β(IL-1β)のmRNA発現が上昇し、この反応にはRAGE-MAPK系経路が関与しており、老化促進物質AGEの炎症促進作用は歯髄でも認められた(2015年論文発表)。 2. 歯肉線維芽細胞:ヒト歯肉線維芽細胞培養系の高濃度グルコース条件下では、IL-6が誘導するプロテアーゼのさらなる上昇が観察され、ICAM1の発現上昇も関連して、歯肉組織の糖化が歯肉組織の破壊誘導に関与していることが示唆された(2016年国際学会および国内学会発表)。 3. 骨芽細胞:ラット骨髄由来骨芽細胞培養系におけるAGEとP. gingivalis由来リポ多糖(P-LPS)の作用を調べた結果、AGEもP-LPSも単独でアルカリフォスファターゼ(ALP)活性と骨様結節(Bone nodule: BN)形成を抑制し、両者の同時添加ではALPもBNも相加的に抑制された。また、骨形成指標であるI型コラーゲン、オステオカルシン、Cbfa1の遺伝子発現もAGEとP-LPSによって抑制された。さらに、これらの反応では、炎症性因子であるIL-1βおよびS100A8のAGEとP-LPSによる上昇がmRNAレベルおよび蛋白レベルで確認された。これらの結果から、老化促進物質AGEと歯周病原因子P-LPSが協調して、骨組織の炎症因子発現を促し、骨形成能を低下させている可能性が示唆された。(2016年Journal of Periodontal Resに掲載) 以上の結果から、歯髄、歯肉、骨のどの組織においても老化促進物質AGEは細胞障害性を発揮し、歯髄では石灰化促進、骨では石灰化抑制に作用し、これらの反応はLPSだけでなく、IL-6などの各種サイトカインが関係した炎症反応を通じて老化が進展するものと考えられた。
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