研究課題/領域番号 |
15K15702
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
斎藤 隆史 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (40265070)
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研究分担者 |
伊藤 修一 北海道医療大学, 歯学部, 准教授 (50382495)
永井 康彦 北海道医療大学, 歯学部, 助教 (60281284)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 象牙質再石灰化 |
研究実績の概要 |
本研究グループでは、齲蝕によって脱灰された象牙質コラーゲンに対して強力な再石灰化誘導活性を有する機能性修復材料を開発するための一助となる基礎的知見を蓄積することを最終目標としている。具体的には接着性モノマーを改良することにより新しい再石灰化誘導性接着性モノマーを開発し、本モノマーによる象牙質再石灰化誘導活性および接着性能をin vitro石灰化誘導実験系/接着実験系で解析・確認することにより、臨床に利用できる性能であるか否かを評価し、本モノマー配合修復材料の実用化への可能性を検討することを目的としている。 平成28年度には、これまでに明らかにした塩化カルシウム5%添加MMA系レジンセメントの再石灰化誘導活性および高い象牙質接着性能・物性を強化するための方策として、塩化カルシウム細粒を35%HEMAで処理した後、象牙質に適用した場合に、SEM/EDXにて接着界面樹脂含侵層直下に高いカルシウムイオンの集積が観察された。このことから、親水性モノマーである35%HEMA処理は塩化カルシウム5%添加MMA系レジンセメントからのカルシウムイオンの象牙質浸透性を高めることによって、本セメントの象牙質再石灰化誘導活性を増強する可能性があることが示唆された。また、象牙質再石灰化をさらに促進する因子として炭酸ガスレーザー照射とフッ化物イオン適用の組み合わせが有効であることが明らかとなり、本レジンセメントで齲蝕歯を修復する際には、炭酸ガスレーザー照射・フッ化物イオン適用が利用することにより性能がさらに強化されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
象牙質再石灰化誘導活性を有する接着性モノマー開発の一助となる知見を得るために、有望な因子であるカルシウムイオンに着目し、塩化カルシウム5%添加MMA系レジンセメントの活性を増強するための方策を模索し、親水性モノマー処理が有効であることを明らかにした。平成28年度は新規モノマー開発までには至らなかったが、モノマー開発のための有用なデータを得ることができた。このことから本研究課題はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、これまでに得られたデータを基に、象牙質再石灰化誘導活性を有するモノマーを設計・合成してin vitro象牙質再石灰化誘導実験・象牙質接着実験を行い、再石灰化誘導活性のみならず、接着性能・物性を兼ね備えた機能性モノマーの規格化を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度には、塩化カルシウムの象牙質浸透性向上を目的としたin vitro実験およびその分析に予想以上に時間がかかり、当初計画した1日、2週、1ヶ月、3か月、6か月、1年、1年6か月および2年間試料浸漬後の確認実験が十分に進まなかった。このことから次年度使用額が生じた。ただし、塩化カルシウムの象牙質浸透性向上を目的としたin vitro実験では非常に有用なデータが得られ、結果的に本課題遂行にとって有利な知見となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に得られたin vitro実験系でのデータ(35%HEMA処理が塩化カルシウム5%配合MMA系レジンセメントからのカルシウムイオンの象牙質浸透性を高めることにより再石灰化誘導活性を増強する)を基に、本レジンセメントの象牙質接着性能に関する長期耐久性を検討する実験を追加して行い、平成29年度計画されている実験で得られるデータ等と総合して、新規う蝕治療材料としての多機能性接着性修復材料開発のための一助とする予定である。
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