本年度は昨年度までに実施した骨密度生涯方程式を用いた骨密度シミュレーションの妥当性を正常有歯顎下顎骨にて検証した。最初に下顎骨におけるa:舌側皮質骨幅、b:髄腔幅、c:唇側皮質骨幅をCT写真から下顎底から上方15mmでの左6番でのCT値をソフトウェア上で計測し、b/a、c/aと年齢の関係に対して回帰分析を行い、内挿曲線を6次の関数で求めた。また、計測値を基に骨密度生涯方程式における各種係数を決定した。次に、骨密度生涯方程式を用いた骨密度シミュレーションを行った。下顎骨において右側半分に荷重を作用させると右下3番部から左側全体にかけての下顎骨密度が、また左側半分に荷重を作用させると左下3番部から右側全体にかけて下顎骨密度が形成され、これら両者を加算することで下顎骨全体の密度分布が得られた。骨密度生涯方程式を用いたシミュレーション計算から求めた密度分布とCTのHounsfield値から求めた密度分布を比較検討したところ、骨密度および年齢の分布がほぼ一致しする結果が見られた。これにより、本研究において設定した骨密度生涯方程式における各係数の妥当性および下顎骨の密度分布に対する骨密度生涯方程式適応の可能性が示唆される成果が得られた。本研究結果は、下顎骨疾病における生体力学的原因の解明やインプラント周囲の骨リモデリング予測における骨密度生涯方程式の有効性を示すものである。しかしながら、骨密度の経年変化の測定値曲線とシミュレーション曲線は相違が見られる部分も存在するため、正確な予測を行うためにはさらまりに研究が必要と考えられた。
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