研究実績の概要 |
本研究は細胞移植の際に使用するコラーゲン・スキャフォールドの架橋制御が、材料の機械的強度を変化させるだけでなく、間葉系幹細胞の骨芽細胞分化を促進し得る可能性を有しているとの仮説から、架橋を変化させたコラーゲン・スキャフォールドを用いて幹細胞 の分化制御を行い、細胞移植を併用した骨再生の場において有効な機能性スキャフォールドの開発、さらにその制御機構の一端を明らかにしようとする試みである. 骨芽細胞株(MC3T3-E1)を架橋阻害剤(BAPN:beta-aminopropionitrile)存在下で培養し、架橋の異なるマトリックスを作製した。架橋阻害剤の濃度は細胞増殖およびコラーゲンの産生に影響を及ぼさずに架橋を阻害する至適濃度を設定することに成功した。Sodium deoxycholateを用いて細胞成分のみを取り除いてマトリックスのみを精製した後、マウス大腿骨骨髄由来間質細胞を播種し、その挙動を解析した。細胞の初期接着、細胞増殖Alkaline Phosphatase活性ならびに骨芽細胞関連遺伝子の発現は低架橋マトリックスにおいて亢進した。動物実験では4週齢のB57BL/6マウスを0.1%または0.25%のBAPNを含有する飼料にて8週間飼育した。脛骨の骨基質から抽出したコラーゲン中のクロスリンク解析から、約40%のクロスリンクの低下が認められた。BAPNの直接的な影響を排除するため、飼料を通常のものに戻した後、0,2,4週後のサンプルから組織標本を作製し骨芽細胞および破骨細胞の活性を観察した。通常飼料に戻した後、4週後のサンプルでは骨芽細胞の活性が上昇したが、破骨細胞活性に変化は認められなかった。
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