研究課題
現在、研究代表者らが開発に成功した義歯用のジルコニアフレームは臨床応用されているが、弾性が要求されるクラスプの適用には問題が残り、いまだパーシャルデンチャーへの全面的な適用には至っていない。本研究では、熱可塑性レジンによるクラスプを応用し、CAD/CAMによるメタルフリーパーシャルデンチャーのワークフローの確立を目指している。平成27年度は、まず、P-ナノZRをフレームワークに用いて製作した部分床義歯28床のクラスプに対して中期的な予後評価を行った。28床に用いたクラスプの総数は63個で、その鉤腕は100個であった。バー型クラスプは8個で、破折は認めなかった。環状型クラスプでは破折を認め、特にリングクラスプの破折を高頻度に認め、エーカースクラスプにも破折が生じていた。欠損歯数には特に傾向を認めなかったが、咬合支持域が減少している症例にクラスプ破折を認める傾向にあり、破折は鉤腕中央~鉤肩にかけて生じていた。また、P-ナノZRは不透明な白色であり、患者自身の歯牙よりも白色が強いことが、審美的に解決すべき問題と考えられた。これらの結果から、研究代表者らは、P-ナノZRをフレームワークに用いる場合には、その物性を考慮し、クラスプ以外の構成要素に用いるのが望ましいと結論づけた。そこで、樹脂クラスプとのコンビネーションによるメタルフリーパーシャルデンチャーの製作を検討した。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度には予定していたクラスプ破折の評価を行い、一定の傾向を見出すことができ、その問題点とP-ナノZRの物性と審美性を考慮した。しかしながら、義歯床部および人工歯部へのCAD/CAMシステムの完全応用には構成要素の接着機構やフレームワークの組み込みなどの解決すべき問題が多く、平成28年度にも継続してその課題に取り組む必要がある。構成要素との接着機構をさらに追求し、平成28年度には義歯製作を行ってその評価を行う予定である。
構成要素の接着機構や樹脂クラスプの物性試験などについては、提携企業の助言のもと、協力して行う予定である。また、フレームワークおよび義歯床形態のデザインについても、より簡便に行えるようなシステムを確立できるように本学歯科技工部とも協力して行っていく。本学では、デジタルデンティストリーに関わる機器を豊富に有しており、それら機器の特性をも考慮して、パーシャルデンチャーのデジタルワークフローの最適化を行いながら、パーシャルデンチャー製作を進める予定である。
メタルフリーパーシャルデンチャーのクラスプ製作に関わる費用が初年度の予測していた金額に達しなかったため、次年度使用額が生じた。
次年度にメタルフリーパーシャルデンチャーのクラスプの接着機構の改良とデンチャーの製作を予定しており、その製作費および研究成果の発表に使用していく予定である。
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Int J Prosthodont.
巻: 28 ページ: 191-7
10.11607/ijp.4113