研究課題/領域番号 |
15K15715
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
宮崎 隆 昭和大学, 歯学部, 教授 (40175617)
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研究分担者 |
荻野 玲奈 (田中玲奈) 昭和大学, 歯学部, 助教 (80585779)
片岡 有 昭和大学, 歯学部, 助教 (90527300)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 殺菌 / エキシマランプ / 光照射 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、水銀を用いないエキシマランプ光照射により根管内微生物の殺菌と根管内の象牙質強化を両立できることを明らかにし、超高齢社会で歯の保存を主体にした根管治療に対する新たな予防・治療方法の可能性を探ることである。申請者は、水銀を用いないエキシマ領域紫外線照射装置の小型化に成功している。また、歯牙および硬組織のナノレベルでの構造解析法(ナノインデンテーション法)を確立し報告している。さらに、骨などの硬組織に注目し、光照射により発生するラジカルがコラーゲン架橋を増強することを明らかにした。このことから、光照射による根管内殺菌と象牙質強化が可能であるという仮説を立てた。本研究では、エキシマランプ光による根管内殺菌効果と機序を解明し、照射に伴う根管内歯質強化の可能性を検証する。 平成27年度は計画通りに、試作エキシマランプを用いたUV照射による殺菌効果を行った。臨床分野での応用を視野に入れ,口腔内細菌の殺菌を検討した.Enterococcus faecalis, Streptococcus mutansの2菌種に対しエキシマUV光を照射したところ、効果が表れた。具体的には、プラスチックディッシュ上にメンブレンを配置し,E. faecalisまたはS. mutansをスポットし細菌感染試験サンプルとした。それぞれ、種々の波長の光照射を行い、光照射後はメンブレンを細菌捕集用として用いた。ぞの結果、エキシマUV光は、短時間で強い殺菌効果が得られた。また、エキシマUV光は低圧水銀UV光と同程度の殺菌効果が得られるものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エキシマランプ光の感染根管に対する有効性を評価し、根管内象牙質に対する影響を分子およびナノレベルで解明するために、(1)~(3)の項目を3年間に亘り解明することを計画していた。(1)ファイバーによるエキシマランプ光の導引と微小領域光強度の測定。(2)エキシマランプ光による殺菌性と根管内象牙質の分子およびナノレベルでの歯質改質メカニズムを解明する。そのために、まずin vitroの実験系で特に次の2点を明らかにする。①根管内細菌培養寒天培地へのエキシマランプ光の照射による細菌数の変化および遺伝子解析、②ラット(又は牛歯)の根管内象牙質へエキシマランプ光照射による強度およびコラーゲン架橋の解析。(3)上記、(1)および(2)を、ラットの感染根管モデルを作製し、エキシマランプ光の殺菌性および象牙質硬化性の両立性があるかin vivoの実験系で検証する。 平成27年度は、試作エキシマランプの特性およびUV照射による殺菌効果を明らかにでき、計画通り順調に経過していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度以降は、in vitroでのエキシマランプ光による殺菌性と根管内象牙質の分子およびナノレベルでの歯質改質メカニズムの解明を進めていく予定である。特に①根管内細菌培養寒天培地へのエキシマランプ光の照射による細菌数の変化および遺伝子解析、②ラット(又は牛歯)の根管内象牙質へエキシマランプ光照射による強度およびコラーゲン架橋の解析を中心に行う。 それらは、原子間力顕微鏡(AFM)を併用したナノインデンテーション法にて天然象牙質と比較することで可能である。ナノインデンテーション法は、サンプル表面に圧子を低加重で段階的に作用させ、表面に形成された圧痕(インデント)と荷重―負荷曲線から、微小領域の硬さと弾性係数を測定することが可能である。 また、顕微ラマン分析を行い、象牙質強度の指標でもあるコラーゲンン架橋の解析を行える。主に、架橋の主体であるアミドⅠおよびアミドⅡの強度の比から架橋度を明らかにし、ナノインデンターで求めた物理的強度との相関を求める。また、エキシマランプ光照射時間との関係を明らかにし、最適な強度を得るのに最適な照射時間を検索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今研究に遂行にあたり、現時点では大学で保有する機器および試作機器での実験が多く、また、その評価にかかわる試薬とに関しても予算を消化するには至らなかった。しかしながら、平成28年度以降は、専門的な分析が必要になり、相応の予算が必要と思われる。特に、遺伝子分析などは各々の分析項目に対し試薬が必要になると思われる。
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次年度使用額の使用計画 |
まずは、根管内細菌培養寒天培地へのエキシマランプ光の照射による細菌数の変化および遺伝子解析を行う。遂行にあたり、相応の菌数が必要になることと、エキシマUVランプ照射による照射時間と細菌残像数との関連を明らかにするために、照射距離および時間を定量的に評価するために試作エキシマUVランプ照射装置の改造が必要になると思われる。 次に、ラット(又は牛歯)の根管内象牙質へエキシマランプ光照射による強度およびコラーゲン架橋の解析を行う。ラット(または牛歯)の象牙質試料を作製し、実験に供するために、試料の調達が必要になる。ナノインデンターおよび顕微ラマン分光分析を行うための、薬剤も必要になる。
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