研究課題/領域番号 |
15K15719
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石幡 浩志 東北大学, 歯学研究科, 助教 (40261523)
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研究分担者 |
兼平 正史 東北大学, 歯学研究科, 助教 (30177539)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | スペースメイキング / 歯周組織再生治療 / 歯槽骨 / 骨増生 / 純チタン / チタンメンブレン / レーザー加工 |
研究実績の概要 |
歯周組織再生治療において,特に歯槽骨実質の増生的回復には長期間を要する事が知られている.そこで本研究では,これまでのスペースメイキング法において長期間の使用に耐えられなかったポリマー製バリアメンブレンに代わり,超高精度マイクロ加工を駆使してφ10μmの貫通孔を高密度アレイとして生成したチタンメンブレンを創成し,長期間の適用を可能とした新たなスペースメイキング法による歯周組織再生療法の確立を試みた. 本年度は非熱レーザー加工法により厚さ20μmの純チタン板に高密度貫通孔アレイを形成したチタンメンブレンを用いた動物実験を行った。被験動物はビーグル成犬4匹を対象とし、東北大学動物実験委員会の承認を得て実施された。術式は両側下顎臼歯部の歯肉をはく離して歯肉弁フラップを形成後、臼歯部を抜歯し、両側の顎骨に近遠心幅10mm、高さ10mm、奥行き4mmの3壁性骨欠損窩洞を形成、次にβ‐TCP骨補填材(テルフィール:(株)オリンパステルモバイオマテリアル)を充填、その部位を開発品で被覆することで骨補填材を保定した。また開発品にはチタン製のフレームが付与されていることで、同時に骨増生スペースのスペースメイキングも行われた。開発品に被覆された人工骨充填部位は、減張切開を施した歯肉弁フラップにて被覆、垂直マットレス縫合にて閉鎖した。術後3が月後に動物を安楽死して下顎骨の標本を生成した。その結果、開発品に被覆された骨欠損部は、メンブレン直下までほぼ完全に新生骨で満たされ、新生骨には良好な血流が確立されていた。組織標本では、設置したチタンメンブレン周囲に骨芽細胞ほ付着が認められ、一方で骨増生部位に対する周囲歯肉下からの軟組織進入はごく僅かであった。本実験によって開発品の骨組織誘導および骨増生効果が確認され、開発品をスペースメイキング法に応用した歯周組織再生治療に有意義な効果を有すると期待される。.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新素材の臨床応用向けモデルの製作から、ビーグル犬を用いての歯周組織再生治療に向け、実質的な開発品の効果を検証でしたことで、当該年度における目標を達成することができた。その成果は歯周組織再生療法に極めて有意義であったことで、純チタンに対するこれまでにない全く新たな加工法による医療機器の創成に向け、大きく前進したことは評価すべきと思われる。ビーグル犬の顎骨を用いる評価法は、開発品を医療機器として承認する上で必須となる薬事承認プロセスにおいても有効な検証手段として認められていることから、この動物実験をより高精度に実施し、開発品の有効性に充分な再現性が得られた時点で、薬事承認申請に向けての足がかりになることが見込まれる。本研究成果が社会実装にまで発展する可能性を見いだせたことは意義深い。本研究では、開発品は量産の上でも無理のない設計したものを採用したことで、上市を達成する上でのハードルの引き下げも図っている。将来における臨床応用を充分見込める開発プロジェクトとして、国民への還元を見据えて開発を進めていきたい.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に引きつづき、ビーグル犬に対する歯周組織再生療法への開発材料の適用を行う試験を実施すると共に,硬組織形成を促進すると見込まれる各種骨補填材を併用した際の硬組織再生効果の増強を試みる.特に歯周病からの硬組織再生治療は、現状では比較的小規模の骨欠損の回復しか望めず、歯周病がより進行した大規模な骨欠損に対しての有効な組織再生療法の確立が求められているからである。 一方で,これまで本研究で行っている硬組織再生を行う箇所にβ‐TCP人工骨を充填し,その周囲をチタンメンブレンで被覆する方法は、歯周組織再生療法としては一般的なものでは無く.チタンメンブレンをバリアメンブレンとして適用した際の実質的な評価は充填材等を用いない、スペースメイキングのみで検証されるべきと思われる。そこで今後はチタンメンブレンを用いたGTR法を中心に動物試験の実施を検討し、歯周再生療法に対するバリアメンブレン法の原点に帰った検証試験を実施していきたい。以上の試験によって,開発したチタンメンブレンの歯周組織再生治療への応用を進めるものとする.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度までの計画は順当に達成され、必要な予算は過不足無く執行された。次年度において本研究をさらなる発展的成功に導くための研究計画において必要となると見込まれる予算を留め置くため、必要最小限について次年度使用額とした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の動物実験をはじめとする各種試験において使用される実験動物、および薬品、器材類、および動物の飼育費にあてる。またこれら研究遂行のために必要な資料収集、研究打ち合わせ、専門家からの教示を得るための学会出張、また医療機器としての開発を念頭としての、商品開発等の展示会に参加しての資料収集のための旅費等に使用する。
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