研究課題/領域番号 |
15K15721
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
宇尾 基弘 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (20242042)
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研究分担者 |
尾曲 大輔 日本大学, 歯学部, 助教 (10608699)
和田 敬広 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (10632317)
本郷 敏雄 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (60142444)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 金属アレルギー / パッチテスト / ナノ材料 |
研究実績の概要 |
金属アレルギーパッチテストの精度向上のためには、通常、金属製品との接触で起こる、溶出と皮膚や粘膜への浸透を可能な限り正確に模擬する必要があるが、現行のパッチテストは高濃度の金属塩溶液で強制的に高濃度の金属イオンを皮膚浸透させているため、アレルギーの再現性に問題がある。本研究で用いる金属ナノボールは直径が直径数十nmの微小金属粒子で、大きな比表面積を持つため、通常の金属微粉末より大きな金属イオン溶出が期待できる。本年度は金属ナノボールを種々の水溶液に分散し、その分散濃度や溶液pHが金属イオン溶出速度に及ぼす影響を評価することを目的とした。具体的には蒸留水および酸性側にpHを調整したリン酸緩衝液に、ニッケルナノボール(直径約50nm)を最大で1000ppmまで分散させ、溶出ニッケルイオンの濃度をICP発光分光分析および比色定量試薬を用いた手法で計測した。また、パッチテストとして使用する際の皮膚へのナノ物質の直接接触を避ける必要から、半透膜を介した間接的イオン浸透を検討した。その結果、以下の知見が得られた。 ・比色定量試薬は金属ニッケル(ナノボール)には反応せず、ニッケルイオンのみに反応して呈色することから、検出されたニッケルは全てニッケルイオンである。 ・皮膚への障害の少ない、弱酸性(~pH 5程度)でアレルギー発症に十分と考えられるニッケルイオンの溶出が認められる。 ・半透膜を介してもニッケルイオンは外部に十分に溶出しており、ニッケルナノボールを直接皮膚に接触させること無く、ニッケルイオンのみを皮膚に浸透させることが可能であること。 ・皮膚を模擬した寒天に対して、パッチテスト類似の金属イオン浸透試験を行った結果、数~数十時間にわたり、持続的なニッケルイオンの浸透が起こること。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属ナノボールに対する適切な分散媒が判明し、半透膜を介した金属イオンの溶出が確認されたことで、今後の金属ナノボールを用いた金属アレルギーパッチテスト素材の開発の可能性が確認できた。今後、実際の皮膚への浸透、他の金属種への応用などの検討を行う必要が考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
金属ナノボール分散液を半透膜を介して動物などの皮膚に接触させた場合の皮膚表層内での金属元素(イオン)の浸透状況を放射光蛍光X線分析などで可視化し、分散液の濃度 や貼付時間による浸透状況を調査する。 加えて他の純金属や実用合金種のナノボールを作製し、同様の溶出効果が得られることを確認し、パッチテストの金属種を拡大する可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
金属ナノボール分散液の作製と溶出評価に関わる試薬・器具などを、今後の多様な金属への範囲拡大を考慮して最小限にとどめたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に放射光蛍光X線分析を予定しており、その試料作成に特殊な器具、分析施設への出張が必要であり、そちらの経費に充当する。
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