研究課題/領域番号 |
15K15722
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
池田 正明 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (20193211)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 再生歯 / 上皮細胞 / 間葉細胞 / 分化転換 / エナメル芽細胞 / 象牙芽細胞 |
研究実績の概要 |
最近、胎生期のマウス歯胚から上皮組織と間葉組織を取り出して三次元培養し、マウスの体内に移植すると機能的な再生歯が形成されることが報告された。しかしながら、歯牙の再生においては、歯胚を構成する細胞の供給源を見つけることが大きな課題となっている。皮膚・口腔粘膜から容易に培養できる上皮細胞と間葉細胞を、それぞれエナメル芽細胞と象牙芽細胞に直接分化転換することができれば、新しい歯の再生療法の開発に繋がると考えられる。 そこで本研究では、(1) 皮膚・口腔粘膜から採取した上皮細胞と間葉細胞を、多分化能のある未分化上皮・間葉細胞に転換できる小分子化合物をスクリーニングする。(2) 得られた未分化上皮・間葉細胞に対してそれぞれエナメル芽細胞および象牙芽細胞に分化転換するために必要な増殖因子、小分子化合物をスクリーニングすると共に、上皮および間葉細胞を組み合わせた三次元培養をおこない分化誘導を試みる。(3) 得られた三次元培養細胞を免疫不全マウスの腎皮膜下に移植することにより上皮・間葉相互作用による自己組織化を促し、エナメル芽細胞および象牙芽細胞へ分化と再生歯形成を誘導することを目指す。 本研究における間葉細胞のリプログラミングには、研究代表者らが見出した骨髄由来間葉系幹細胞の長期間培養条件の確立が基本になると考えている。これまでの研究結果により、研究代表者らは骨髄由来間葉系幹細胞を高い多分化能を保ったまま、長期間培養することの出来る添加因子(増殖因子・小分子化合物の組み合わせ)を見出しているが、高齢者(65歳以上)から採取した間葉系幹細胞の分化能、特に軟骨分化能を保つことが出来なかった。そこで、添加因子を詳細に検討し、個々の増殖因子および小分子化合物の増殖・多分化能維持における役割を調べた。その結果、高齢者の間葉系幹細胞の増殖と分化能を維持できる添加因子の組み合わせを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り、申請者らは今年度の解析の結果、高齢者の間葉系幹細胞の増殖と分化能を維持できる添加因子の組み合わせが明らかにした。この成果は、本研究の目的と直接は関係ないが、間葉系幹細胞の多分化能の維持における貴重な情報が得られた。またこの成果は間葉系幹細胞の臨床応用において非常に有用な知見であると考えられる。 さらにヒト皮膚由来の線維芽細胞に対する効果を検討した。この間葉系幹細胞の長期培養に最適であると同定された添加因子の組み合わせに加えて、複数の新たな因子の効果の検討もおこなった。その結果、皮膚線維芽細胞の骨および脂肪細胞への分化能の上昇が認められたが、軟骨細胞の分化は認められなかった。線維芽細胞の分化転換にはさらに解析が必要であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、昨年度までの検討を進めるともに、長期賠償した間葉系幹細胞および皮膚線維芽細胞のin vivoのおける硬組織形成能を解析する予定である。さらに再生歯の形成には未分化上皮細胞が必要である。そこでヒト正常皮膚組織由来ケラチノサイトを用いて増殖因子・小分子化合物をスクリーニングし、未分化上皮細胞への分化転換に最適な因子を検討するとともに。間葉系幹細胞との共培養をおこない、上皮・間葉細胞を共存させた時の細胞の変化を分化マーカーの発現解析などをおこなうことにより検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験動物(マウス)の動物管理飼育費の支払のために予算を残しておいたが、実験が予定より早く修了したために次年度使用額がが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度におこなう予定の動物実験の動物購入費および動物管理飼育費に使用する予定である。
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