研究実績の概要 |
本年度は,1型糖尿病を自然発症するNODマウスの脾臓からリンパ球の培養方法を確立させて,数日培養後の,TH17細胞と制御性T細胞数を測定することができた。また,それらの細胞が発現するIL17とIL10の遺伝子発現量を測定することもできた。一方で,リンパ球と共培養予定のヒト歯髄幹細胞を倫理委員会の承認下において,培養・増殖させることができた。次に,そのヒト歯髄細胞におけるCD80, CD86,CD105,CD146などの表面抗原の発現陽性細胞の割合を測定することもできた。次に,本実験の本題となるマウスリンパ球とヒト歯髄細胞を共培養することも可能となった,そこで,共培養後のリンパ球の生存数を検討すると,ヒト歯髄細胞と共培養しない場合と比較して,リンパ球の生存率が有意に高くなることが明らかとなった。次に,共培養後のTH17細胞と制御性T細胞(CD4,CD25,CD127陽性)数を検討すると,細胞傷害性T細胞(TH17細胞)数は有意に減少し,制御性T細胞の割合は有意に増加することが明らかとなった。したがって,本年度において,実験計画の示したように,ヒト歯髄幹細胞の免疫寛容能を持つことが示唆できる結果がえられたことになる。しかしながら,制御性T細胞のマスター遺伝子の発現量についての変化は無かった。次に,細胞内サイトカイン(IL4, IL6, IL10, IL12, IL17, TNF, IFN, TGF)の発現量をサイトカインアレイを用いて確認したところ,炎症を抑制する効果があることが明らかとなった。また,サイトカインアレイ解析からMCP-1の発現も共培養することで有意に高くなることが分かった。 しかしながら,このMCP-1は,既に報告されている指標であり新規のマーカーではなかったので,その点については,計画と異なっている。。
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