研究課題
本研究の目的は、腫瘍細胞では増殖可能で最終的には細胞を溶解し、正常細胞では増殖できない腫瘍溶解アデノウイルスを開発することである。AU-rich element (ARE)はがん遺伝子など主に細胞の増殖に関わる遺伝子のmRNAに存在するエレメントで、正常細胞ではARE-mRNAは合成後すぐに分解されるが、がん細胞では核外輸送され安定化し、細胞がん化に寄与する。本研究ではアデノウイルスの複製に最も重要なE1A遺伝子にAREを付与し、がん細胞特異的に複製できる全く新しいタイプのアデノウイルスを開発することを目的とする。平成29年度は、我々の研究室で分離した、シスプラチン耐性口腔がん細胞を用いて、腫瘍溶解アデノウイルスAd+AUの腫瘍溶解効果を検討した。各細胞にAd+AUを感染させ、ウイルスの増殖をウイルスの外殻タンパクであるヘクソンタンパクの抗体を利用して解析した。その結果、耐性細胞でもAd+AUが増殖できることがわかった。次にウイルスにより、各細胞に起こる細胞死をXTT assayにより検討した。その結果、Ad+AUは、シスプラチン耐性口腔がん細胞に腫瘍溶解効果を持つことが明らかになった。さらに、シスプラチン耐性口腔がん細胞での、シスプラチンとAd+AUを併用した場合の腫瘍溶解効果も解明した。これらの解析で、抗がん剤に対して抵抗性を持つ、シスプラチン耐性口腔がん細胞に対しても腫瘍溶解ウイルスが有効であることが示せた。
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