研究課題
本研究においては、ヒトと同等の大きさのリンパ節を有し、リンパ節転移の形成過程をタイムゼロから解析できるリンパ節転移マウスモデルを用いて、転移病巣の形成に伴うリンパ節内の微小環境の変化を解析し、その結果に基づいた、口腔癌所属リンパ節転移に対するリンパ行性の薬剤投与法を用いた新たな放射線・化学療法の開発を目的とする。本研究においては、転移リンパ節に対する放射線・化学療法の奏効を低下させる要因について、リンパ節内の血管に注目し免疫病理組織学的に検討した。その結果、リンパ節内の腫瘍新生血管の増生初期段階においては、CD31陽性αSMA陰性の未熟な血管であり、これらの血管は血液循環系と連結していない可能性が示唆された。さらに、リンパ節は線維性の被膜で被覆されており周囲からの血液供給には制限があることに加え、リンパ節内血管の腫瘍塞栓によりリンパ節内への血液流入が抑制されることが示唆された。以上より、従来の血行性の抗癌剤の投与では、転移リンパ節に有効な抗癌剤の投与量に達しない可能性が示唆された。一方、放射線治療の奏効性は腫瘍組織の酸素分圧に影響を受けることから、上記のように血液流入が抑制された転移リンパ節においては、放射線に対する感受性が低下する可能性が示唆された。この問題の解決策として、リンパネットワークにおいて転移リンパ節の上流に存在するリンパ節に抗癌剤を注入した場合、リンパ管を介して下流の転移リンパ節に超選択的に抗癌剤を送達することが可能であることが明らかとなり、リンパ行性の癌化学療法は、早期のリンパ節転移に有効である可能性が示唆された。しかし、転移リンパ節における放射線治療に対する抵抗性の問題については、今後、リンパ節転移の病巣形成過程におけるリンパ節の酸素分圧の測定等を行い、リンパ節内の酸素分圧を増大させる方策や照射のタイミング等に関してさらなる検討が必要と思われた。
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Experimental and Therapeutic Medicine
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