研究課題/領域番号 |
15K15736
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山本 朗仁 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50244083)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 再生医学 / 骨延長 / 血管再生 / 骨芽細胞 / 破骨細胞 / 間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
【概要】間葉系幹細胞の無血清培養上清(MSC-CM)のプロテオーム解析によって、「抗炎症性・組織再生型 M2 マクロファージ (Mac)を誘導する新規タンパク複合体」を同定した。この複合体はケモカインMCP-1と分泌型TypeIレクチンsSiglec-9で構成される。この新規M2誘導複合体をラット脊髄損傷モデルに投与すると、損傷部位の組織破壊的な炎症環境を抗炎症環境に変換し、下肢運動機能を著しく改善する。本申請研究では、整形外科や口腔外科領域で臨床的に用いられている、大型組織再建システム・骨延長術に新規M2Mac誘導複合体を局所投与し、治癒促進効果とそのメカニズムを明らかにする。これにより新規骨延長促進製剤の開発に必要な知財権の獲得を目指す。 【27年度研究成果】①M2誘導2因子の骨再生能力評価に頭蓋骨欠損モデルを使用した。ラット頭蓋骨に直径5mmの円形欠損を形成した。これに2因子を含有したコラーゲンスポンジを単回留置した。治療後6週で骨形成の促進を確認した。組織染色と定量的PCR法を用いて、骨欠損部位の炎症環境が抗炎症環境に変化したことを確認した。②骨延長速度の加速モデルでは仮骨形成不全になる延長速度においても2因子を静脈内投与、あるいはコラーゲンと混和後延長部位に投与することで仮骨形成促進を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究期間内に明らかにすること】 (1)8週例ラット頭蓋骨に直径5mmのトレフィンバーで骨欠損を制作した。直後にM2誘導2因子を含浸したアテロコラーゲン(コウケン)を留置閉創した。6週後のCT検査で骨再生量と骨密度を計測した。2因子投与群はPBS投与群に比べて有意に骨形成が促進されていた。Hematoxilin-Eosin染色にて骨再生量を検証した。BMP2タンパク1μgを超える骨再生量を確認した。 (2)マウス骨延長にM2Mac誘導複合体を投与し、骨延長の治癒促進効果を検証。8週齢の雌性ICRマウスを実験動物とし、片側性の骨延長モデルを作製した。骨延長の速度は 0.2mm/12時間とした。ペントバルビタール40mg/㎏をマウス腹腔内に投与し、腓骨を明示し周囲組織の損傷を最小限にして、腓骨のみを骨折させた。脛骨近位端に25G針を、遠位端に27G針をそれぞれ2本ずつ貫通させ、即時重合レジン(ユニファストⅡ、GC社)にて延長装置と固定する。延長装置はエキスパンジョンスクリュー(600-301-30;オーソデントラム社)と、即時重合レジンで作成した外径20㎜、内径10㎜、厚さ5㎜の固定装置を連結させた。Hematoxilin-Eosin染色にて仮骨形成促進効果を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
頭蓋骨欠損モデル、骨延長モデルにおける骨再生効果を組織科学的、及び生化学的に検証する。M2Mac誘導複合体の間葉系幹細胞、骨芽細胞、破骨前駆細胞の増殖・分化に与える影響を解析する。各種細胞を培養し、M2Mac誘導複合体を添加する。WST-8 にて間接的に細胞数を比較、細 胞増殖に与える影響を検討する。間葉系幹細胞の骨芽細胞分化に対する影響を、骨芽細胞分化マーカーであるアルカリフォスファターゼ活性や、骨芽細胞分化マーカー (Runx2、Osterix)の遺伝子の発現を検討。 破骨細胞分化に与える影響は、骨髄細胞を M-CSF と RANKL の存在下で破骨細胞へと分化誘導し、 TRAP 染色や破骨細胞分化マーカー (Nfatc1, CtsK, Acp5)の遺伝子の発現を検討。さらに経時的ELISAとの組み合わせでM2Mac誘導複合体による骨再生を促す最小有効量を定める。ステロイドの炎症抑制効果と M2マクロファージ誘導による抗炎症・組織再生効果が骨延長治癒に与える影響を精査する。
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