研究課題
口蓋裂は先天異常であり、遺伝的要因と環境的要因が複雑に関係している。治療法としては、手術が主体であり、先進的な治療法の開発が期待されている。口蓋の発生機序は、両側の上顎突起から口蓋突起が発生し癒合する際に、口蓋板の成長と水平転移または挙上、上皮細胞の接着と自己分解、間葉の癒合という段階を経るとされている。発生段階において、いずれかで障害を生じると口蓋裂が発生する。胎仔マウスを用いて、口蓋癒合時に口蓋突起に著しく発現する遺伝子群を同定した。このデータベースを活用して、口蓋癒合のメカニズムを明らかにしようと研究を進めている。胎仔マウスの口蓋突起の癒合前、癒合中、癒合後の遺伝子発現をマイクロアレー法を用いて解析した。癒合前の遺伝子発現をコントロールとすると、Keratin13は、癒合中に112.6倍、癒合後に290.7倍に上昇することが確認された。Ceacam1は、癒合中に38倍、癒合後に106.1倍に上昇、car3は、癒合中に37.4倍、癒合後に17.2倍に上昇した。ノックアウトマウスを用いた解析では、Ceacam1が口蓋癒合に関与することが明らかになったが、Keratin13、car3との関係は不明であり、他の遺伝子との相互作用についても解析中である。我々のデータベースからTenascinCという細胞外マトリックス蛋白を見出した。リアルタイムPCRと免疫組織染色により、TenascinCが、口蓋の癒合中から癒合後にかけて軟口蓋部に強く発現していた。メカニズム解析を行うために、マウス胎仔口蓋から間葉系細胞を分離し、TGFβ3で間葉系細胞を刺激するとTenascinCの発現が著しく上昇した。以上の結果とノックアウトマウスを用いた解析から、口蓋形成時期の軟口蓋におけるTenascinCの発現は、TGFβシグナルに関与していることが明らかになった。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 3件)
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