研究課題
我が国での頭頸部癌化学放射線療法に伴う口腔粘膜炎の治療は、機械的・化学的口腔清掃が中心だが、国外では以前より「低反応レベルレーザー治療(LLLT)」が行われ、文献的有用性もシステマティックに検証され、我が国でもLLLT研究への積極的な取組みが急務である。近年、レーザー以外にLEDなどの光源も含めてLLLTを捉え、「低反応レベル光治療」として認知されてきたが、本研究によりLEDの口腔粘膜炎への有効性を見出し、レーザーよりも安価で操作性のよいLED光を用いた口腔粘膜炎の治療機器開発の可能性を探っている。1年目は代表的な口腔内常在菌および培養口腔扁平上皮癌細胞株に対して複数の異なる波長のLED光をそれぞれ別個に照射して、生存細菌数、増殖細胞活性などの影響を詳細に検討した。当該年度の2年目は、それら1年目で得られた知見からさらに培養口腔扁平上皮癌細胞株を用いた解析を継続して進め、LED光の中でも青色光は同細胞に負の影響や効果を与えず照射無しと同等と判定できそうなのに対し、赤色光は細胞の増殖活性に加えて新たに遊走能にも多角的に影響を及ぼすことを示唆する結果を得ることが出来た。最終年度の3年目は、赤色光により誘導される細胞遊走能のメカニズム解明に特化して、研究をさらに進めた。遊走能はWound healing assayやTranswell migration assay、さらに遊走能促進に働く遺伝子群の発現変化をreal-time PCRで解析、蛍光免疫染色で照射後の細胞の形態変化も観察した。これらの結果として、赤色光照射によりHSC-3は紡錘形に変化し遊走能が亢進、さらには遊走促進に働くとされるInterleukin-8 (IL-8)の発現誘導も確認された。よって、赤色光はIL-8の発現誘導を介しHSC-3の増殖、遊走能を促進する可能性が示唆された。
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