平成28年度は、ミダゾラム封入リポソームを細粒化することによる効果および機序に焦点を当てて研究を進めた。クロロホルムとメタノール混合溶媒中に、脂質(ホスファトジルコリン、コレルテロール、ジパミルトイルホスファチジン酸)とミダゾラムを混和し、平成27年度の研究で得られた条件で、細粒化ミダゾラム封入リポソームを作製した。ウサギに、リポソームに封入されていないミダゾラム溶液(ミダゾラム量として2mg/kg)、細粒化していないミダゾラム封入リポソーム溶液(ミダゾラム量として2mg/kg)、および細粒化ミダゾラム封入リポソーム溶液(ミダゾラム量として2mg/kg)をそれぞれ経口投与し、投与後の鎮静効果と血中ミダゾラム濃度の推移を比較したところ、ミダゾラムをリポソームに封入することによって、ミダゾラムのバイオアベイラビリティが高くなり、さらに細粒化することによってミダゾラムの鎮静効果が早く現れ、バイオアベイラビリティがより高くなった。次に、ミダゾラムを封入していないリポソーム溶液、ミダゾラム封入リポソーム溶液、および細粒化ミダゾラム封入リポソーム溶液をそれぞれウサギに経口投与し、アポリポ蛋白B-48(ApoB-48)の血中濃度の推移を評価した。その結果、ミダゾラムを封入していないリポソーム溶液およびミダゾラム封入リポソーム溶液では、血中ApoB-48濃度は投与前と比較して投与後低下したが、細粒化ミダゾラム封入リポソーム溶液では血中ApoB-48濃度が高値に維持されていた。ApoB-48は消化管からの脂質の吸収を反映している蛋白であることから、リポソームを細粒化することで消化管からの吸収が高められたことによって、ミダゾラムの鎮静効果が早く現れ、バイオアベイラビリティが高くなったのではないかと示唆された。
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