研究課題
癌の浸潤・転移過程において、EMT(上皮間葉移行)と呼ばれる現象が重要なステップであることが明らかとなってきている。しかし、実際の口腔扁平上皮癌症例の病理診断においては、転移を有する症例であっても明らかにEMTの組織像を見ることは少ない。興味深いことに、口腔扁平上皮癌の亜型に紡錘細胞癌と呼ばれる明らかにEMTの性質を有する癌が存在する。我々は以前に紡錘細胞癌の細胞株を樹立しており、その細胞株が間葉様の性質と高い浸潤能を有することから、この腫瘍型では何らかの因子が強力にEMTを誘導していると仮説を立てた。そこで、本研究では我々の有する紡錘細胞癌細胞株に対して、shRNA libraryを用いたゲノム規模の網羅的な遺伝子機構解析を行い、口腔扁平上皮癌のEMTを強力に誘導する因子を同定することを試みる。さらに、invasionを標的とした口腔癌の新たな治療戦略の開発を目指す。前年度に引き続き、平成28年度はE-cadherinが発現した際にGFPを発現するようなレポーターを組み込んだ紡錘細胞癌細胞株の作成を行った。様々な方法を検討した結果、ゲノム上のE-cadherin遺伝子の3 prime UTRにGFPを挿入する方法を選択した。具体的にはゲノム編集技術であるCRISPRのgRNAをゲノム上のE-cadherin遺伝子の3 prime UTRに設計し、DNAの二重切断を引き起こし、最近新たに報告されたMMEJ(microhomology-mediated end-joining)と呼ばれる修復機構(Nature protocol, 2016)を利用して、GFP cDNAをknock-inし、E-cadherinが発現した際にE-cadherinとGFPの融合遺伝子が発現するように改変した紡錘細胞癌の細胞株を作成することに成功した。
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Oral Oncology
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