従来、進行口腔癌は手術療法、放射線療法、化学療法による集学的治療がなされてきた。しかしながら、近年第4の治療法として癌免疫療法が注目されており、癌微小環境におけるT細胞の免疫チェックポイント阻害やNK細胞のADCC活性を期待した抗体薬が用いられている。そこで、本研究では口腔癌の癌微小環境におけるB細胞の局在を確認した上で、口腔癌の進展におけるB細胞の関与を明らかにすることを試みた。まず、2006年から2012年までに当科にて口腔扁平上皮癌と診断され、根治目的に標準治療が行えた58症例を対象とし、免疫組織化学染色にてCD4、CD8、CD20、Foxp3発現の評価を行い、陽性細胞数を計測した。それぞれ中央値を基準に高および低浸潤群に分類し、全生存率(OS)、無病生存率(DFS)との相関を評価した。その結果、CD4、CD8、Foxp3陽性細胞数とOS、DFSには有意な相関は認められなかった。しかしながら、CD20陽性細胞数と予後には有意な相関が認められ、CD20陽性細胞数が腫瘍間質に多く浸潤しているほどOS、DFS共に良好であった。口腔扁平上皮癌においてBリンパ球浸潤が予後に影響を及ぼす可能性が示唆された。つづいて、口腔扁平上皮癌組織におけるB細胞誘引性サイトカインであるCXCL13の発現について検討した。口腔扁平上皮癌10症例では全ての症例において隣接正常部と比較して3倍以上のCXCL13 mRNAの発現亢進が認められた。以上より、口腔扁平上皮癌の進行にB細胞やCXCL13が関与している可能性が示唆された。
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