研究課題/領域番号 |
15K15750
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
西川 哲成 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (70140209)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 抜歯 / 骨増生 / 生体吸収性 / サンゴ / 組織親和性 |
研究実績の概要 |
研究目的 う蝕、歯周疾患、嚢胞そして腫瘍などで歯を失った症例では、顎の骨量が減少するため、義歯の維持やインプラントの適応が困難となることが多い。そこで、骨量の減少を防ぎ、さらには骨量の増加を目的とした抜歯後処置を検討することが目的である。本実験では、抜歯後の処置として、抜歯後の足場材料の応用について骨量に与える影響の観点から3つを検討する。 研究方法 琉球大学理学部より提供を受けた培養によって得られたエダコモンサンゴを走査電子顕微鏡とマイクロCTで観察するとともに、物理的強度を測定し、また酸性やアルカリ溶液による変化を調べ、天然のエダコモンサンゴと比較した。また、培養したヒト線維芽細胞にサンゴブロックを添加して組織為害性を観察した。ビーグル犬の左側下顎骨の臼歯を抜去した直後、サンゴブロックを埋入し、縫合した。また対照群として右側下顎骨の臼歯を抜去した直後、何も埋入することなく縫合した。これらは抜歯直後、4週後、8週後にX線撮影を行い骨量の変化を観察した。また、抜歯後7週後にカルセインそしてアリザリンを投与し、抜歯後8週後にビーグル犬を犠牲にし、下顎骨を摘出したのち、未脱灰標本を共焦点レーザ走査顕微鏡(CLSM)で新生骨を観察した。 研究結果 培養エダコモンサンゴは天然のサンゴと比較し多孔質で比重は軽く、圧縮強度は低下していた。また、酸性溶液に対しては容易に溶解し、アルカリ溶液では溶液中のカルシウムがサンゴに沈着していることがわかった。培養、天然サンゴ粒子の表面には線維芽細胞が増殖しており、組織親和性が確認された。また、ビーグル犬の左側下顎骨の臼歯を抜去し、サンゴブロックを埋入した場合、何も埋入しなかった対照群の右側下顎骨の臼歯を抜去した場合と比較し、骨量の減少の抑制が認められさらに埋入したサンゴの生体による吸収が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回の骨増生を目的とした生体吸収性の足場材料として培養多孔性サンゴの性状の検討とともに応用を試みた。培養多孔性サンゴの形態観察そして物理的・科学的性状の検討に関しては終了したが、イヌ抜歯への応用では飼育の関係からイヌの実験が遅れ、X線やCLSMによる経週的な骨量観察は終わったが、脱灰標本による組織学的観察は完了していない。
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今後の研究の推進方策 |
今回、骨増生を目的とした足場材料に多孔性サンゴを用いたが、骨増生に対して周囲組織からの圧迫に耐えられる圧縮強度を有し、かつ生体による吸収が可能な材料であることが推察された。今後は新生骨の形成や生体吸収性のメカニズムを病理組織学的に解明するとともに、抜歯以外の応用範囲を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
イヌを用いた動物実験で、他研究者の実験と重なり実験施設の許容頭数を超えたため、実験の開始に後れを生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
イヌを用いたin vivo実験は本年度6月までに終了させ、組織所見結果のための標本作成、染色そして観察は9月に終了する予定である。
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