研究課題
慢性的な間欠性低酸素血症を伴う小児の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、全身領域の変調のみならず、上部気道の狭窄の要因となる小顎症や歯列狭窄などの顎顔面領域の劣成長を特徴的に呈する。しかし、これまで小児OSA患者を対象とした骨代謝に関する調査は国内外を問わず皆無であり、小児OSAの病態を再現した実験モデル動物を用いた研究も少なく、本疾患における顎顔面骨の骨代謝変調の機構の詳細は不明とされている。OSA患者を対象とした臨床研究、間欠的低酸素曝露を再現した動物モデルを用いた基礎研究から、間欠的低酸素曝露は、交感神経のβ2受容体を活性化し、様々な病態に関与することが知られている。そこで、本研究では、小児OSAにおける顎顔面骨の成長障害機構の解明を目的に、間欠的低酸素血症による交感神経受容体の機能亢進、とりわけ骨代謝制御に関わる交感神経β2受容体を介した骨形成制御を予想し、成長期ラットを用いた間欠的低酸素曝露モデルを用いた実験を計画した。はじめに、実験で用いるラットの週齢を設定するために、離乳期(3週齢)および思春期前後(7週齢)のラットへの3週間の間欠的低酸素曝露実験を行い、結果として、思春期前後のモデルにおいて、下顎骨の成長障害が著しく生じることが判明した。その後、機序解明のため、交感神経β2受容体の選択的阻害剤であるブトキサミンの徐放性ポンプを、7週齢ラットの腹腔内に埋入し、3週間、間欠的低酸素曝露(90秒サイクルの4%酸素への曝露)チャンバー内にて飼育を行い、その後、四肢骨および顎顔面骨の形態学的評価を軟X線の規格写真により行い、さらに、マイクロCT解析による骨密度の評価を行った。対照群には、同型チャンバーから通常大気の曝露を行った。実験結果から、ブトキサンミン投与による下顎骨の成長回復が形態学的に認められ、下顎頭末端の骨密度の変調が抑制されることが示された。
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