研究課題/領域番号 |
15K15754
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
仲野 和彦 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (00379083)
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研究分担者 |
大川 玲奈 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (80437384)
仲 周平 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (10589774)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | IgA腎症 / コラーゲン結合タンパク / ミュータンス菌 / う蝕 / 腎炎 / 蛋白尿 / 糸球体 |
研究実績の概要 |
IgA腎症は、慢性糸球体腎炎の中で最も頻度が高く、20年の経過で約40%が末期腎不全におちいる最も重要な腎疾患の1つであるが、発症機序は依然として不明な点が多い。本研究では、う蝕の起因菌であるStreptococcus mutansのうちコラーゲン結合タンパク(Cnm)陽性株がIgA腎症と関連していると仮説を立てた。臨床研究においては、健常人とIgA腎症患者より唾液を集め分析を行い、さらにIgA腎症患者のう蝕の評価を行い、臨床データとの関連を分析した。その結果、Cnm陽性S. mutans株の陽性者率は、健常群と比較して IgA腎症群で有意に高値であった。また、IgA腎症の患者のうち、Cnm陽性者群はCnm陰性者群よりも有意に蛋白尿が多いことが明かとなり、Cnm陽性S. mutans株がIgA腎症と関連していることが示唆された。 次に、スクロースを飼料として与えているう蝕モデルラットを用いて、IgA 腎症患者より検出したCnm陽性 S. mutan 株をラットの口腔内に定着させてう蝕を誘発し、腎臓への影響を検討することとした。その結果、IgA 腎症患者より分離したCnm陽性 S. mutanns 株を感染させたラット群の腎臓の糸球体では、非感染群のラットと比較して、IgA の沈着が有意に多く認められることが明らかとなった。これらの結果より、Cnm陽性 S. mutans 株が、口腔内でう蝕を誘発することにより、腎臓での IgA の沈着を促進し、IgA 腎症を発症させている可能性が示唆された。次年度は、う蝕モデルラットを用いて、腎臓以外の臓器にも焦点をあてて、S. mutans の関連する IgA 腎症発症のメカニズムの解明を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトを対象とする検討では、当初の予定通りの検体数を確保することができた。また、分析に関しても予定通り順調に遂行することができた。ラットう蝕モデルを用いた検討も予定通りに進展し、興味深い知見が得られたため、次年度に詳細を分析するつもりである。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトを対象とした検討では、口腔内所見とIgA腎症所見に関して検討を開始する予定である。また、動物モデルにおける検討に関しても、予定通りメカニズムの追究を進めていきたいと考えている。
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