研究課題
歯の再植における歯根膜修復・再生を組織学的に解析するため、マウス再植歯モデルを作製した。4週齢のC57Bl6マウスを用いて左側第1臼歯を抜歯・再植し、1週から4週後に歯根膜再生を評価した。歯根膜再生過程の組織学的な評価として、HE染色、 Periostin、αsmooth muscle actin (αSMA)、Bone sialoprotein (BSP)抗体にて免疫組織学的解析を用いた。歯根膜を構成する 細胞外基質であるPeriostinは、再植後の再生歯根膜全体に広く発現を認めた。血管平滑筋細胞の指標として用いたαSMAも再植後の歯根膜組織に広く観察され、この発現は血管新生だけでなく、筋線維芽細胞の増加を示すものと考えられた。無細胞セメント質のマーカーとしてBSPを用い、歯根表面のBSP発現の連続性によって、歯根吸収を評価した。歯根膜オキシタラン線維の再生過程を評価するため、Fibrillinの免疫染色を試みたが、パラフィン切片で反応する抗体が得られず評価できなかった。現在、アルデヒドフクシン染色での弾性線維形成としての評価を検討中である。さらに、再植歯の歯根膜修復・再生が再植歯歯根膜由来ではなく、抜歯窩から供給される細胞によって行われるかを、神経堤由来細胞が標識できるWnt1-creのR26Rノックインおよび非ノックインマウスとを用いて交換再植し、X-gal染色を施行し観察をおこなった。再生歯根膜には、X-gal陽性と非陽性の細胞がどちらも観察されたことから、歯根表面に残存する歯根膜を失っても、抜歯窩からの細胞供給によって歯根膜が再生できる可能性が示された。現在、ヒト歯根膜線維芽細胞を用いて、歯根膜線維芽細胞の遊走能を促す因子をin vitroにて検討中である。
2: おおむね順調に進展している
歯の再植をマウスに試行し組織学的に評価する一連の実験手技については十分に習得し、さらに、評価時期を再植後4週と決定した。抗Fibrillin抗体を用いた染色については、予定通り進んでいないが、Perostin抗体を用いた免疫染色は問題なく行うことができるため、新たにPeriostinについて解析を進めている。またヒト歯根膜細胞を入手し、培養実験を開始した。
今後は、ヒト歯根膜細胞を用いたin vitroでの解析を中心に進めていく。歯の再植に際し、再植歯の歯根吸収を防ぎ、さらに歯根膜結合組織形成を促す細胞外基質蛋白の検討を開始する。研究計画においては、Fibrillin蛋白を用いた検討を予定していたが、Periostin蛋白を用いた検討も加える。細胞皿に候補となる細胞外基質蛋白をコーティングし、細胞増殖能、細胞遊走能を検討する。
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