本年度はマウス臼歯咬合面に歯科用レジンを築盛し、人工的に咬合性外傷を発症させるモデルを作成し、歯肉組織におけるERストレス関連分子の発現を歯周病原細菌投与モデル、歯牙結紮モデルマウスと比較した。その結果、咬合性外傷モデルでは歯牙結紮歯肉炎症モデルとは異なり、ATF4、IRE1a、CHOPのいずれも発現上昇は認められなかった。咬合性外傷による歯槽骨吸収を抑制する作用を持つresveratrolを飲水に入れて投与した場合にいずれの分子も咬合性外傷単独と比較して発現上昇を示す傾向が認められたが、統計的に有意な変動は示さなかった。 本年度ERAIマウスの繁殖が順調に進み、実験に供せる数の個体が得られ、ERストレス発現の可視化を検討した。 まず。予備的実験としてERストレスを誘導する作用を有するTunicamycinをB6マウスおよびERAIマウスに投与し、16時間後に肝臓組織を取り出してパラフィン切片を作成、抗ルシフェラーゼ抗体による免疫染色を行った。Tunicamycin投与により肝臓に小胞体ストレス応答が生じることは先行研究並びに我々の過去の報告から明らかになっている。しかし、この方法ではERストレスの検出はできなかったことから、内在性に小胞体ストレスが存在する膵臓での検出を試みた。その結果、膵臓において未刺激、Tunicamycin投与いずれにおいてもルシフェラーゼの反応は見られなかった。 これらの結果から、歯周病原細菌投与、歯牙結紮による全身への影響をこのモデルで検出することはできないと判断するに至った。
|