研究課題
歯周炎やう蝕は口腔内の細菌による感染症である。う蝕は進行すると歯髄に細菌が感染し、全身に感染した細菌が移行する。また歯周炎は細菌により微小構造が破壊され、炎症を伴うことで局所の血管が拡張し、細菌が血液に侵入する状態『バクテレミア(菌血症)』を呈する(Support Care Cancer. 2013 Jun;21(6):1621-7.)。このバクテレミアを予防するための方法は、ブラッシングによる機械的プラーク除去、洗口剤などによる化学的な除去である。しかし、これらは非特異的で一時的な方法であるため、継続して行わなければ一定の効果は得られない(J Periodontol. 2007 Apr;78(4):654-60.)。さらに口腔内由来細菌の感染(バクテリミア)は様々な全身疾患の原因となることも知られている。また、バクテリミアに続く全身の機能障害が原因の2次的な機械的プラーク不良をきたす(Sci Rep. 2014 May 6;4:4828.)。本研究課題では生物学的プラークコントロール(プロバイオティクス)の有効性をメタゲノム解析を用いて検討した。さらに乳酸菌プロバイオティクスによる細菌叢の変遷、特に歯周病原細菌P. gingivalis抑制をターゲットに研究を行うこととした。特にリウマチモデルマウスSKGマウスに歯周病原細菌の1種であるP. gingivali(Pg)を感染させ、腸管粘膜の免疫応答、腸内細菌叢の解析を行った。腸内細菌叢はBacteroides属減少と、Prevotella属の増加が認められた。またIgMからIgAにクラススイッチするB cellで発現する酵素の増加が認められ、糞便中に分泌されるIgA量がPg感染群でd優位に増加していた。したがって、口腔内の病的細菌叢が、腸管細菌叢を変化させ、全身へ悪影響を及ぼしていることが示唆された。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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