研究課題
昨年度、歯周炎関連線維芽細胞を含む「生体外歯周炎モデル」のGeneChip解析により、歯周炎の原因遺伝子としてFLT1 (VEGFR1)が最もリスクの高い遺伝子であることを報告した(Ohshimaら, J Clin Periodontol 2016)。しかし、これまでにGeneChip解析したモデルをpathway解析ソフトによりメタ解析を行ったところ、HGFがよりリスクの高い原因候補遺伝子である可能性が浮上した。HGFはこれまでに申請者らが歯周炎特異的かつ有用なマーカーとして歯肉溝滲出液から検出し、報告した因子である。さらにHGFは、破骨細胞の分化と活性化を担う因子あることが報告されており(KnowlesとAthanasou, 2009)歯周炎による骨吸収にはHGFが関与している可能性が大きいことが判明した。そこで各種の方法で「生体外歯周炎モデル」におけるHGFシグナルを阻害したところ、確かにコラーゲン分解が抑制された。現在特許出願中であるため、具体的な方法の記述は差し控えたい。また、理研FANTOM5のCAGEデータ解析から、歯周炎関連線維芽細胞ではDLX5とRunx2 p1が発現していないことを見出した。これは遺伝子ごとに転写開始点を調べられるCAGE法の特徴を活かした発見であった。これにより、歯肉線維芽細胞と、歯周炎原因細胞と考えられる歯周炎関連線維芽細胞とが明らかに異なる細胞であることが証明でき、さらにqPCRでこの細胞を検出する方法として確立できた(Horieら, Sci Rep 2017)。これに加えて、歯周炎治療薬の効果をモニターするための歯肉溝滲出液中のmiRNAを用いた生物学的診断法を開発した(Saitoら, FEBS Open Bio 2017)。2年間の本科研費助成により、歯周炎原因細胞である可能性が高い歯周炎関連線維芽細胞の遺伝子発現をベースとして、具体的な歯周炎治療薬の候補を提案することができ、併せて科学的な診断方法も開発することができた。今後はトランスレーショナルリサーチに進みたい。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件) 産業財産権 (1件)
FEBS Open Bio
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Sci Rep
巻: 6 ページ: -
doi:10.1038/srep33666