研究課題/領域番号 |
15K15772
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大内 章嗣 新潟大学, 医歯学系, 教授 (80334671)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 介護保険施設 / 経口維持加算 / 経口移行加算 / 口腔衛生管理 / 介護報酬 / 歯科専門職 / 協力歯科医療機関 / 連携 |
研究実績の概要 |
介護保険施設の入所者の経口摂取・口腔機能を維持することを目的に、介護報酬上、経口移行・経口維持管理加算や口腔衛生管理(体制)加算が設定されている。しかし、これらの取組みにおける咀嚼・口腔機能の位置付けや歯科専門職の役割は具体的に明示されておらず、こうした取組みに必要な歯科専門職種等の協力・確保が困難であるなどの理由から、施設における算定件数は増加していないとの指摘がなされている。 そこで、本研究では、食事摂取・栄養管理支援における咀嚼・口腔機能の役割を明確化し、両者の連携を推進していくために、施設職員の介護負担の低下など、社会経済学的側面も含めた効果を明らかにすることを目的としている。 初年度である平成27年度は、N県内の全介護保険施設を対象として、郵送自記式質問調査票調査を実施した。調査項目は入所者の状況、職員の配置および歯科専門職との連携状況、介護報酬の算定定状況(栄養マネジメント加算、経口移行加算、経口維持加算、療養食加算および口腔衛生管理体制加算、口腔衛生管理加算)とした。なお、本研究は新潟大学歯学部倫理委員会の承認を受けて行った(承認番号27-R28-1-21)。 111施設から調査票を回収し(回収率36.5%)、分析を行った結果、栄養マネジメント加算、口腔衛生管理体制加算はそれぞれ94.6%、67.6%と比較的多くの施設で算定されているものの、経口移行加算(9.0%)、経口維持加算1(38.7%)、経口維持加算2(22.5%)、口腔衛生管理加算(17.1%)は算定施設が4割に満たないこと、9割以上の施設で協力歯科医療機関を定めているものの、その連携の実態は様々であり、経口維持加算2や口腔衛生管理加算を算定している施設では、歯科衛生士や言語聴覚士などの専門職を独自に確保している傾向があることなどが明かとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究初年度である平成27年度は、研究計画に従い、介護保険施設における栄養管理支援および口腔衛生管理の実施状況、歯科関係職種との連携などの実態把握を行うとともに、次年度に実施する抽出追跡調査のための対象の把握を目的に、N県内の全介護保険施設(介護老人福祉施設、介護老人保険施設、介護療養型医療施設)を対象とした郵送自記式質問調査票調査を実施し、111施設から調査票を回収した(回収率36.5%)。 当初、5~6割程度の回収率を想定していたが、各算定項目毎の要介護度別算定者数等、詳細な内容の記載を求めたことも影響してか、回収率が思わしくなく、葉書による再度の協力依頼や記載内容漏れ等の確認に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、前年度のアンケート調査結果をもとに、施設種別・施設規模別・栄養管理加算等の算定の有無・歯科医療機関等との連携の有無別に無作為抽出し、協力の得られた施設(計100施設程度)を対象に、介護報酬請求状況、医療経費、職員の配置状況、各加算を算定している入所者の状態や介護に要する時間の変化などの社会経済面を中心とした追跡調査を実施することとしており、概ね計画どおりに実施できるものと考えている。 ただし、前年度のアンケート調査の回収率が当初の想定を下回ったことから、追跡調査対象施設の類型化において、施設規模別等の一部の分類を省略あるいは単純化する必要が生じている。しかし、各加算算定の有無や歯科医療機関・歯科専門職との連携状況による社会経済面の効果の差など、萌芽研究としての所期の目的は達成できるものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、平成27年度のアンケート調査結果を基に、平成28年度の追跡調査の実施に向けて、本学大学院生等の協力を得ながら、調査対象候補施設への事前訪問を行い、現状確認や調査協力を取り付ける予定であったが、実施したアンケート調査において各算定項目毎の要介護度別算定者数等、詳細な内容の記載を求めたことも影響してか、回収率が思わしくなく、葉書による再度の協力依頼や記載内容漏れ等の確認に時間を要したため、謝金、旅費等の経費の執行が当初予定より若干遅れている。
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次年度使用額の使用計画 |
アンケート調査回収率が当初想定を下回ったことを受け、追跡調査の対象施設の類型化について、一部省略あるいは単純化することとし、現在、調査対象候補施設を絞り込んだところで有り、今後、当初の予定どおり、平成28年度内には計画した研究内容および経費の執行が完了する予定である。
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