研究実績の概要 |
介護保険施設入所者の経口摂取・口腔機能を維持することを目的に、介護報酬上、経口移行・経口維持加算や口腔衛生管理(体制)加算が設定されている。本研究では、食事摂取・栄養管理支援における咀嚼・口腔機能の役割を明確化し、両者の連携を推進していくために、社会経済学的側面も含めた効果を明らかにすることを目的としている。なお、本研究は新潟大学歯学部倫理委員会の承認を受けて行った(承認番号27-R28-1-21)。 平成27年度にN県内の全介護保険施設を対象として実施した、入所者の状況、職員の配置および歯科専門職との連携状況、介護報酬の算定定状況(栄養マネジメント加算、経口移行加算、経口維持加算および口腔衛生管理体制加算、口腔衛生管理加算)に関するアン ケート調査では、督促葉書を送付する等、回収に努めたものの、回収率が36.5%と当初の想定を下回った。このため、平成28年度には、記入者の負担軽減のため、設問内容の見直し・簡略化を図り、再度、N県内の全介護保険施設を対象として郵送自記式アンケート調査を実施し、128施設から調査票を回収した(回収率42.1%)。平成29年度は2回の調査結果を用いた分析を進め、平成27年12月時点と比較して、栄養マネジメント加算が94.6→96.9%、経口維持加算1が38.7→43.8%、経口維持加算2が22.5→25.0%、口腔衛生管理加算が17.1→21.9%と増加傾向を示した一方、経口移行加算および口腔衛生管理体制加算がそれぞれ9.0→8.6%、67.6→64.8%と若干減少傾向を示していたが、統計的有意差は認めず、これら加算の算定状況が拡大していないことを明らかにした。また、各加算の算定の有無に関し、施設による歯科専門職の独自雇用の有無が有意に関連しており、歯科専門職の独自雇用により1施設月額平均62,000円程度の増収となることなどが明らかとなった。
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